研究課題
本研究では、HIV感染症の治癒を目的としたHIV特異的CTLによる細胞療法の基礎基盤の確立を目指す。現在では治癒が不可能であるHIV感染症において、抗HIV治療下で治癒を妨げる潜伏感染細胞を再活性化し、宿主免疫により感染細胞を排除する「Kick & Kill」戦略に基づき、そのエフェクターとしての抗HIV効果の高いCTLの作製法について検討した。HIV感染者では慢性的な抗原刺激によりT細胞が老化状態にあり、治療下でも不可逆的な機能不全に陥っていること、また治療によるウイルス抗原量の減少によりHIV特異的CTLの絶対数が激減することが知られている。本研究ではiPS細胞技術を用いてHIV特異的CTLの機能を回復させ、高い増殖能とHIV感染細胞を除去し得る十分な機能を備えたHIV特異的CTLの作成を試みた。HIV感染者から樹立したHIV特異的CTLクローン由来のiPS細胞を樹立し(T-iPSC)、T細胞へ再分化、T-iPSC由来HIV特異的CTL(T-iPSC-CTL)を作成した。T-iPSC-CTLは試験管内では高い増殖を示し、元のCTLクローンと比して高い増殖能を有していた。抗原特異性と抗原認識感度を段階希釈した抗原ペプチドに対する反応性により確認したところ、元のCTLクローンと同様の感度を有していた。さらに、抗HIV活性の評価を行うため、HIV-LTR依存性に蛍光タンパク質を発現するCD4陽性T細胞株やHIV潜伏感染細胞株に特定のHLA遺伝子を導入し、CTLによるHIV感染細胞傷害活性の評価系を確立した。T-iPS-CTLは効率良くHIV感染細胞を傷害し得ることが明らかとなった。本研究結果から、iPS細胞技術を用いることでHIV特異的CTLを若返らせ、高い増殖能と抗HIV活性を持つ優良なエフェクターCTLの作製が可能であることが示唆された。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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