研究課題/領域番号 |
25293227
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 国立感染症研究所 |
研究代表者 |
阿戸 学 国立感染症研究所, その他部局等, その他 (20392318)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 感染症防御学 / 細菌感染 / 好中球減少 / サイトカイン |
研究概要 |
劇症型溶血性レンサ球菌感染症や重篤な敗血症において、しばしば重大な予後の原因となる好中球減少を伴うことが知られている。その主な機序として、好中球の直接障害や内皮細胞への接着亢進など、末梢血中の好中球への作用がこれまで考えられてきた。申請者らは、劇症型感染マウスモデルの骨髄において、顆粒球造血の抑制と、感染に対して保護的に働く新規インターフェロンγ産生骨髄系未熟細胞(γIMC)の産生を見いだした。本研究では、これら骨髄造血の修飾機構を分子レベルで解析し、重篤な細菌感染症における病態形成への役割を明らかにした上で、感染に対するemerging hematopoiesis について新規知見の蓄積と、将来的な臨床への応用のための科学的基盤を確立することを目的とする。 平成25年度は、新規インターフェロンγ産生骨髄系未熟細胞が好中球前駆細胞に近縁の細胞群から分化していることが確認された。すなわち、γIMCの分化は、感染マウス骨髄内のみに存在するγIMC前駆細胞から自分自身の産生するインターフェロンγ依存性に起こる。一方、インターフェロンγの作用を遮断すると、γIMC前駆細胞はインターロイキン-6の存在下で好中球に分化した。以上のことから、劇症型レンサ球菌感染症マウスモデルにおいて、好中球造血の抑制が起こると、代償性の顆粒球造血がおこり、その中で生じたインターフェロンγ産生骨髄細胞から感染防御に有用なγIMCが産生されるが、同時に好中球造血傷害を補う機構も併せ持っていることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成25年度の当初計画では、劇症型レンサ球菌感染症マウスモデルにおける、好中球造血傷害の責任分化段階の特定と分化機能修飾の解析を行う予定であったが、当該分化段階の特定に至っていない。そこでこの作業を行いつつ、顆分化段階の下流であるγIMCの分化機構を解析して、γIMCがどの分化段階から分化しているかの解析を行い、最終的な目的であるγIMCの分化機構に迫る知見を得ることが出来た。
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今後の研究の推進方策 |
劇症型レンサ球菌感染症マウスモデルにおいて、1.好中球分化が障害されている主要な分化段階を同定し、2.この分化障害がどのような機構で起こっているかをコロニー形成の及び分化に必要なサイトカインへの応答性や、骨髄内での前駆細胞の定着能に関する解析を行う。 以上によって、好中球分化障害の責任分化段階が明らかした後、この分化抑制が、造血系細胞に起因するか、骨髄ストローマ等の造血環境が原因であるかを感染マウスへの細胞移入実験を通じて検証する。次に、劇症型感染、非劇症型感染群、あるいは非感染群の責任分化段階の造血細胞またはストローマ細胞をそれぞれ分離し、各実験群間でマイクロアレイ法によりトランスクリプトーム解析(委託)を行うことによって、劇症型感染における骨髄好中球産生抑制にかかわる候補因子を同定する。 同定した候補因子の好中球減少に対する役割は、前駆細胞に関しては、レトロウイルスベクターpBabe-GFPを使用する。また、顆粒球系に分化した段階に対しては、Human Monocyte Nucleofector Kitを使用する。これを用いて、候補責任遺伝子の発現増強ペクターまたはsiRNAを導入して、同様の分化阻害、あるいは増殖の低下等が起こるか確認する。
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次年度の研究費の使用計画 |
細胞のソーティングを効率よく行うために、設備備品費としてMiltenyi Biotec 社 BioVarioMACS Separatorを予算計上していたが、所属機関で同様の機器であるMiltenyi Biotec 社 autoMACSが共通機器として導入されたため、購入の必要が無くなった。また、消耗品等も安価に購入できたことから、計画よりも剰余金が生じた。 物品費として使用予定。
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