研究課題
劇症型溶血性連鎖球菌感染症や重篤な敗血症において、しばしば重大な予後の原因となる好中球の直接障害や内皮細胞への接着亢進など、末梢血好中球への作用がこれまで考えられてきた。申請者らは、劇症型感染マウスモデルの骨髄において、顆粒球造血の抑制と、感染に対して保護的に働く新規インターフェロン(IFN)γ産生骨髄系未熟細胞(IMC)が産生されることを見出した。本研究では、これら骨髄造血の修飾機構を分子レベルで解明し、重篤な細菌感染症における病態形成の役割を明らかにした上で、感染に対するEmerging hematopoiesisについての新規知見の蓄積と、将来的な臨床の応用のための科学的基盤の整備を目的とする。平成26年度の成果として、IFNγ欠損マウスとインターロイキン(IL)-6欠損マウスの劇症型感染分離株の感染時の骨髄におけるIMCの産生を確認したところ、極めて重篤な感染時を除き、IMCは骨髄内で分化して、体内に分布することが確認された。しかし、これらの欠損マウス由来のIMCは、劇症型感染に対する自然免疫応答が大幅に減弱し、サイトカインの補填によっても回復しないことから、IFNγとIL-6がIMCの適切な分化に必要であることが明らかとなった。
3: やや遅れている
平成26年度の当初計画では、劇症型レンサ球菌感染症マウスモデルにおける好中球造血障害の特定と分化機能修飾の解析を行う予定であったが、当該分化段階が複数ある可能性があり、どの段階が最も障害されているか評価を持続する必要がある。そこで、この解析を継続するとともに、IMC分化に必要な因子の探索を行い、分化そのものは障害されないが、正常な機能の獲得にIFNγとIL-6がオートクラインもしくはパラクラインの形で供給されることが必須であることが判明した。
好中球分化が障害されている段階のそれぞれの重要度を明確化し、この分化障害かどのような機序で起こっているか明確化する。また、分化障害が、造血系細胞と骨髄ストローマ等の環境のどちらに原因があるか検索する。次に、劇症型感染、非劇症型感染群、あるいは非感染群の責任分化段階の造血細胞またはストローマ細胞をそれぞれ分離し、各実験群間でマイクロアレイ法によりトランスクリプトーム解析(委託)を行うことによって、劇症型感染における骨髄好中球産生抑制にかかわる候補因子を同定する。同定した候補因子の好中球減少に対する役割は、in vitroの系において前駆細胞に関しては、導入実績のあるレトロウイルスベクターpBabe-GFPを使用する(Chuang et al. J Exp Med 2009)。また、顆粒球系に分化した段階に対しては、Human Monocyte Nucleofector Kit(Amaxa社)を使用する (Minakani et al)。これを用いて、候補責任遺伝子の発現増強ペクターまたはsiRNAを導入して、同様の分化阻害、あるいは増殖の低下等が起こるか確認する。
年度末納品等にかかる支払いが平成27年4月1日以降となったため、当該支出分については次年度の実支出額に計上予定。平成26年度分についてはほぼ使用済みである。
上記のとおり。
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Autophagy
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感染症
巻: 45 ページ: 29-39