研究課題/領域番号 |
25293234
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
小戝 健一郎 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 教授 (90258418)
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研究分担者 |
三井 薫 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 講師 (40324975)
伊地知 暢広 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 助教 (80380624)
入江 理恵 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 助教 (90381178)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 小児腫瘍学 |
研究実績の概要 |
癌遺伝子治療では、癌特異的増殖型アデノウイルス(CRA)の開発が期待されており、研究代表者は「多因子で精密に目的細胞(癌)を特異化、治療できる」m-CRAという次世代ベクターの開発に成功した。特に研究代表者が開発したSurvivin反応性m-CRA(Surv.m-CRA)は、ほぼ全癌種で高発現しているSurvivin遺伝子をプロモーターに用いており、癌細胞特異的にウイルス増殖とウイルス蛋白による癌細胞死が誘導される。 一方、小児の癌は成人の癌と比べ生物学的特性も異なり難治であり、小児癌を主標的とした革新的癌治療法の開発研究はほとんどなされていない。治療効果が高く、成人癌よりも高い安全性(癌特異性)が要求される「小児癌への革新的治療薬」を開発するには、正常と癌の幹細胞の分子機構の違いを明らかにして癌特異性を完全に近づけること、そしてその高いハードルは全く新たな治療技術で行うことが有用である。本研究ではこれまでの申請者達の「多能性幹細胞での再生医学」と「癌幹細胞」の研究成果を基盤として、将来の臨床応用を目指して「小児の癌へのm-CRA治療技術を開発」する。 平成26度は、Surv.m-CRAの骨軟部悪性腫瘍(小児でも好発)への医師主導治験を平成27年に開始できるように研究開発を含めて準備を進める一方で、がん幹細胞、正常の幹細胞を用いて、本課題の基礎的研究開発もさらに進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年に続き、小児に好発する癌の幹細胞分画を分離濃縮、癌の幹細胞以外の分画、この両者の間、さらには未分化のES/iPS 細胞(正常幹細胞)、ES/iPS 細胞から分化した正常細胞を単離したものの間で、未分化特異的遺伝子の発現様式などにつき解析を進めてきた。また、小児の癌のある細胞腫については、DNAマイクロアレイなども行っている。正常の未分化細胞と分化細胞においても、網羅的解析を効率的に進める独自の系の開発、そしてその条件の最適化もできた。このように、着実に研究を進捗させている。
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今後の研究の推進方策 |
癌幹細胞特異的プロモーター、可視化・同定用のEGFP発現ユニットを組み込み、癌幹細胞特異的m-CRA(CS-m-CRA)を作製し、その特性を解析、そして臨床的有用性を検証する。つまり正常細胞は殺傷しないが、癌は幹細胞だけでなく一般分画の癌細胞も全て殺傷できるタイプの、あるいは正常細胞を殺傷しないだけでなく、一般の癌細胞も殺傷しない(あるいは殺傷力が弱い)一方で、癌幹細胞は著明に殺傷できるm-CRAの二つのタイプのm-CRAの解析を行ってきた。今後はその詳細なin vitro解析を進めるだけでなく、in vivoの実験も進めたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究自体は基本的に計画どおり順調に進んでいるが、網羅的遺伝子解析は、やはりできるだけターゲット遺伝子を絞り込めるようなシステムで行う方が結局はゴールに早く近づけると判断した。よって、従来よりも確実で効率的な実験系を確立することが重要と考え、その独自の系の開発と最適化に努めた。幸い系はある程度順調にできたので、来年度はその系で解析を集中的に行う予定である。
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次年度使用額の使用計画 |
上記のように、確立した実験系で網羅的解析を行い、その研究に繰越経費を使用する。
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