研究課題
基盤研究(B)
交付申請書に記載した研究の目的、実施計画に基づき、まずVISTAデータベースよりSema3Cのゲノム遺伝子制御領域に存在する、種を越えて保存された転写因子結合配列を検索し、その領域をサブクローニングした。その結果、Sema3Cの発現を制御する転写制御の候補として、Sema3Cゲノム上流(5’側)約-500bp付近の種を越えて保存されたForkhead(Fox)転写因子群の結合配列が検出された。トランスジェニックマウスによる検討およびluciferase assay、ChIP assayにより、Foxc1およびFoxc2が上記Fox結合配列に結合して転写を活性化することが明らかになった。また、上記Sema3C発現制御領域にlacZレポーターを挿入したトランスジェニックマウスを用いたin vivoの検討で、Tbx1の発現が低下したマウス(Tbx1neo/neo)において、lacZの発現が異所性に亢進していることがわかった。組織学的には、二次心臓領域由来および心臓神経堤由来の両細胞群において、Sema3C-lacZの発現が異所性に亢進していた。Tbx1は二次心臓領域に発現するが、心臓神経堤には発現しない転写因子であるため、Tbx1発現低下マウスの心臓神経堤細胞でSema3Cが過剰発現する分子メカニズムとして、Tbx1の下流標的因子が存在すると考えられた。そこで、マウス胚より摘出して培養した心臓神経堤細胞を用いた実験系で、Tbx1の下流の分泌性増殖因子Fgf8を添加して刺激すると、培養心臓神経堤細胞におけるSema3Cの発現は抑制され、また、抗Fgf8抗体(Fgf8ab)によりFgf8を抑制すると、Sema3Cの発現が亢進することを明らかにした。
2: おおむね順調に進展している
上記研究実績の概要に記載した結果より、以下に示す心臓流出路発生の新たな分子メカニズムを解明し、本研究課題の平成25年度到達目標に達した:二次心臓領域ないし心臓流出路遠位では、Tbx1が発現してSema3Cの発現を抑制する。また、その周辺の心臓神経堤細胞に対しては、Tbx1の下流標的因子であるFgf8が発現して二次心臓領域から分泌され、心臓神経堤細胞を未分化、遊走状態に維持する。一方、流出路近位から肺動脈円錐部では、Gata6およびFoxc1/c2によりSema3Cの発現が活性化され、上記により遊走してきた心臓神経堤細胞を流出路近位へと誘導する。Sema3C陽性の流出路近位部ないし肺動脈円錐部に到達した心臓神経堤細胞は、流出路中隔細胞へと分化し、同時にSema3Cを発現するようになる。そして分泌されたSema3Cにより、次々に心臓神経堤細胞が誘導され、流出路中隔細胞へと分化し、さらなる心臓神経堤細胞を誘導する。
平成25年度に得られた成果をさらに発展させるため、平成26年度は、まずTbx1 発現低下マウスの心臓流出路異常に合併する肺動脈発生異常について解析する。肺動脈平滑筋を特異的に標識する2 型IP3R-lacZ マウスで、流出路異常に合併する肺動脈発生異常の病態を解明する。具体的には、二次心臓領域細胞の発生異常により心臓流出路異常(総動脈幹症)を発症するTbx1 発現低下マウスを疾患モデル動物として、心臓流出路異常に合併する肺動脈発生異常を明らかにする。Tbx1発現低下マウスは研究代表者らによって樹立され、研究室で良好に継代中である。しかし、これまでに肺動脈の発生についてはまったく検討されていない。その大きな要因として、肺動脈の細胞を特異的に標識するマーカーがないことが挙げられる。研究代表者らは、細胞内カルシウム調節に重要な役割を果たすイノシトール3 リン酸受容体(IP3R)の心臓血管発生における機能について解析し、2 型IP3R が肺発生において気管支平滑筋細胞には発現がなく、肺動脈平滑筋細胞に特異的に発現するマーカーになるという画期的な結果を得た。本研究では2 型IP3R-LacZ マウスを用いて肺動脈平滑筋を特異的に標識し、発生過程における肺動脈の構築を解析する。
未使用額の発生は、効率的な物品調達を行った結果であり、翌年度の消耗品購入に充てる予定である。効率的な物品調達を行った結果、25年度の研究費に未使用額が生じたが、26年度に消耗品購入に充当し予定の研究計画とあわせて実施する。
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Proc Natl Acad Sci U S A.
巻: 110 ページ: 12667-12672
10.1073