研究課題/領域番号 |
25293239
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研究機関 | 公益財団法人東京都医学総合研究所 |
研究代表者 |
山形 要人 公益財団法人東京都医学総合研究所, 脳発達・神経再生研究分野, プロジェクトリーダー (20263262)
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研究分担者 |
藤原 浩樹 山形大学, 医学部, 助教 (50433868)
田中 秀和 立命館大学, 生命科学部, 教授 (70273638)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | West症候群 |
研究実績の概要 |
当初の計画では、West症候群責任遺伝子(Tsc1/2)を脳の海馬特異的に欠損させ、光遺伝学を用いて発作を抑制する計画であった。しかし、責任遺伝子を脳全体(CamkIIプロモーター下)で欠損させると激しい発作を起こし、生後すぐに死亡するが、海馬特異的(PomcあるいはGrik4プロモーター下)に欠損させると全く発作を起こさないか、起こしたとしてもいつ発作が起きるかわからないという問題点があることがわかった。光遺伝学の効果を調べるためには、焦点が局所かつ任意の時期に発作を起こすことが必要であり、現時点でこの手法をてんかん病態へ応用することの限界と考えられた。 そこで、West症候群の症状(難治性てんかん発作など)を軽減する方法の開発へと計画を変更し、モデルマウスのてんかん発作を抑制する薬物の探索を開始した。まず、Tsc2ヘテロマウスの海馬ニューロンを初代培養し、そのシナプス形態異常を回復される薬物をスクリーニングした。これまでの解析から、Tsc2ヘテロマウスのシナプス形態異常はmTORの活性化ではなく、Rhebが活性化する結果、synteninが増加するためであることを見出している。そこで、Rheb機能を抑制する薬物を添加したところ、Tsc2ヘテロニューロンのシナプス形態を回復させる作用があることがわかった。さらに、これらの薬物をCamkII-Cre;Tsc1 floxedマウスに投与し、てんかん発作に対する効果を調べたところ、てんかん発作を軽減することが明らかになった。以上の結果から、Rheb機能を薬理学的に抑える方が、光遺伝学的手法を用いるよりも、West症候群の中枢症状を改善させると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初は、West症候群責任遺伝子を脳の部位特異的に欠損させ、光遺伝学を用いて発作抑制する計画であった。しかし、責任遺伝子を脳全体で欠損させると激しい発作を起こし、生後すぐに死亡するが、部位特異的に欠損させても発作を起こさないか、起きたとしても時期が予測できないと言う問題点が明らかになった。そこで、発作を抑制する薬物を探索する計画へと変更し、モデルマウスのてんかん発作に有効な薬物を見出した。将来的な臨床応用を考える場合、光遺伝学を用いる手法よりも、薬物の有効性を解析する方がはるかにインパクトが大きいと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今回見出した薬物の、West症候群に対する有効性のメカニズムを調べる。まず、阻害薬が効果を発揮する生化学的メカニズムを検討した後、個体レベルでの有効性を検証する。West症候群では、てんかん発作だけでなく、知的障害も大きな問題である。そこで、West症候群モデルマウスが記憶障害を示すかどうか、また今回見出した薬物が記憶障害に有効かどうかを調べる。薬物の有効性が示されたなら、記憶想起に伴って活性化されるニューロンを抗体で標識し、モデルマウスにおける活性化ニューロン数が、薬物投与によって増加するかどうかを検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
光遺伝学をWest症候群のてんかん発作に応用するため、脳の局所からてんかん発作が生じるモデルの作製を試みたが、発作を起こさないか、起こしたとしても時期を予測出来ないという問題点が明らかになった。そこで、光遺伝学的手法を用いる計画から発作を抑制する薬物の探索へと計画を変更したため、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
物品費(五種類の阻害薬、四種類の抗体、ウエスタン用試薬・転写膜、組織化学用試薬・器具、動物代など)に275万円、旅費に10万円、その他(動物輸送や学会参加費、振込手数料など)に34万円を見込んでいる。
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