研究課題/領域番号 |
25293241
|
研究機関 | 金沢医科大学 |
研究代表者 |
八田 稔久 金沢医科大学, 医学部, 教授 (20238025)
|
研究分担者 |
島村 英理子 金沢医科大学, 医学部, 講師 (00267741) [辞退]
島田 ひろき 金沢医科大学, 医学部, 講師 (60278108)
東海林 博樹 金沢医科大学, 一般教育機構, 准教授 (10263873)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 母体免疫 / 白血病抑制因子 / インターロイキン6 / DOHaD / 自閉症スペクトラム |
研究実績の概要 |
妊娠12.5日 (12.5 dpc) のC57BL/6Jマウスに Polyinosinic:polycytidylic acid (Poly I:C)(1, 4, 20 mg/kg BW)を腹腔内投与することで,母体免疫亢進モデルマウスを作成した。昨年度までの研究により,母体免疫亢進と母体IL-6レベルは正の相関を示すが,胎盤におけるPOMCの発現,胎児血清ACTHおよびLIFレベルはPoly I:C低濃度域(1 mg/kg BWおよび4 mg/kg BW)では正の相関を示すが,高濃度域(20 mg/kg BW)ではともに減少した。より低用量からの影響を調べるために,Poly I:C 0.1, 0.5, 1, 5,10, 2, 40 mg/kg BW投与群における胎児臓器(体重,脳,肺,心臓,肝臓,腎臓,消化管,脾臓)重量を,18.5 dpcおよび生後3週に計測した。その結果, Poly I:C 0.1mg/kg BW投与群のみで胸腺重量が著しく減少(対照群の約50%)することが明らかとなった。LIF刺激による胎盤の遺伝子発現変化については,DNAマイクロアレイを用いて解析した。その結果,Canonical pathwayではAllograft Rejection Signaling,Crosstalk between Dendritic Cells and Natural Killer Cells,Cytotoxic T Lymphocyte-mediated Apoptosis of Target Cellsなどが影響を受けることが明らかとなった。POMCからメラノコルチン分子種の切り出しを行うために必要なProprotein convertase 1および2については,LIF刺激後の胎盤では変動が確認されなかった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初年度は,Poly I:C投与妊娠マウスを用いた,母体LIFレベルとIL-6レベルのエライザによる測定,母体LIFレベルとIL-6レベルの測定と母体免疫亢進の程度との相関性解析,母体LIFレベルの変動と胎盤ACTH,胎児血中および脳脊髄液中LIFレベルの相関性解析,胎盤Pomc mRNAの発現に与える影響の解析,母体免疫亢進の程度とSocs3の発現量および STAT3リン酸化量の相関性解析,絨毛間腔に面した栄養膜表面におけるgp130 および LIFRの発現解析については,おおむね研究計画を達成することができた。 母体免疫亢進と母胎間LIFシグナルの変動が正の相関を示さないことから,平成26年度は,母体免疫亢進状態をごく軽度から重度まで細かく6段階に分けて,胎児の臓器発育に与える影響を詳細に検討した。その結果,最低用量群でのみ胎児胸腺の発育に重篤な影響が出現することが見いだされ非常に有意義な知見が得られた。しかし,この実験は当初予定していなかったため,研究全体の進捗状況としては遅れを生じてしまった。母胎間シグナルに対する胎盤のDNAマイクロアレイ解析については,LIF投与群でのみ結果の解析が進められている。現在,個別の遺伝子発現について,定量PCRにてvalidationを行っている状況であり,当初の計画より若干遅れている。特に胎盤の遺伝子発現関連ならびに胎児におけるELISAを中心とした解析に関して,研究分担者・島村の病気による休職・逝去のため若干の遅れが生じた。
|
今後の研究の推進方策 |
ノックアウトマウスを用いた解析については,MC5Rノックアウトマウスのコロニーが確立できたので,平成27年度には実験に用いることができる。SOCS3コンディショナルノックアウトマウスについては,胎盤特異的Cre発現マウスの選定・作成者とのMTA契約も完了しており,速やかに導入し実験を開始する。DNAマイクロアレイにより発現変動が認められた遺伝子のスクリーニングと定量的PCRによるvalidationを最終年度も継続して行う。また,母体免疫亢進モデルにおけるmiRNAの発現についてもマイクロアレイを用いてスクリーニングする。母体からのLIFシグナル枯渇に対する胎盤におけるポジティブフィードバック機構に関しては,候補パスウエイと考えていたWnt/βカテニン/TCFパスウエイおよびhedgehogパスウエイがLIF刺激により明らかな変動を示さなかった。従って,これらに対する解析は中断し,当初計画していた低栄養モデルについては検討対象から除外・整理することで,最終年度における実験の効率化を図る。 研究分担者であった島村が逝去したため,彼女の担当部分については,研究分担者である島田が担当する。島村,島田はともに代表者・八田の研究室のメンバーであり,本研究課題に関連する研究に長年従事してきたため,最終年度の島村の役割分担を島田が担当する。ただし,島田が担当する各実験の負担を軽減するために,実験補助者を雇用する。従って,最終年度に,島村の役割分担を島田が担当することは十分に可能である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
研究分担者島村英理子の死亡(平成26年12月12日変更承認申請書提出済み)により研究分担者島田ひろきが遂行する間の多少の遅れが生じたため未使用金が生じることとなった。
|
次年度使用額の使用計画 |
島村の役割分担を島田が遂行するに当たり未使用金を使用する。
|