研究実績の概要 |
昨年度までの研究により、妊娠マウスへのpoly I:C投与量と母体血清IL-6濃度には正の相関性が認められた。一方、LIFおよびその下流で動く分子については高用量では逆に発現抑制がかかることが明らかとなった。これは、poly I:C用量依存的に発現が亢進するSOCS3によって、LIF/gp130下流のSTAT3リン酸化が抑制を受けることが原因であると考えられた。また胎児大脳皮質の総ニューロン数および分裂細胞数はpoly I:C用量依存的に減少することが明らかとなった。また低用量域(0.1. 0.5 mg/kg BW)における胎児臓器重量の検索では、胸腺重量が減少することが明らかとなったため、低用量群について解析を進めた。Poly I:C低用量域の反応は、LIF投与と同レベルの反応を現していると考え、LIF投与モデルにおける解析を行った。妊娠13.5日のマウス母獣にLIF(5μg/kg BW)投与し、30分および3時間後における胎児大脳、胎盤および肝臓の遺伝子発現をマイクロアレイ解析した。その結果、Jak2/STAT3、MAP2経路に関する遺伝子群およびSOCS3の発現については明らかな変動は認められなかった。しかし、胎児大脳では、インターニューロン産生・分化誘導関連遺伝子群が発現亢進し、それらは発現亢進した全遺伝子群のうちの上位を占めることが分かった。胎盤ではAllograft rejection signaling, Cross talk between DC and NK cells, Cytotoxic T lymphocyte-mediated apoptosis関連遺伝子の発現が亢進し、胎児胸腺で認められた発生異常との関連が示唆された。この結果より、軽度の母体免疫亢進では、母体由来の炎症性シグナルは胎盤における調節機能をすり抜ける可能性を示唆する。
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