研究課題/領域番号 |
25293243
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研究機関 | 浜松医科大学 |
研究代表者 |
戸倉 新樹 浜松医科大学, 医学部, 教授 (00172156)
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研究分担者 |
平川 聡史 浜松医科大学, 医学部, 准教授 (50419511)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 免疫学 / 発現制御 / 細胞・組織 / シグナル伝達 |
研究実績の概要 |
ヒトの乾癬の病態において重要なT細胞はIL-17A産生性のTh17細胞である。乾癬マウスモデルにおいては、主なIL-17A産生細胞はTh17細胞ではなく、γδT細胞である。さらにこのγδT細胞の活性化には形質細胞様樹状細胞(plasmacytoid dendritic cell, pDC)が関わり、VEGF-AがpDCの走化性因子として働いていることを示した(Suzuki T et al. J Dermatol Sci, 2014)。乾癬病態に関わる樹状細胞には炎症性樹状細胞inflammatory DC(TIP-DC)とpDCとがある。TIP-DCとpDCの活性化状態がIL-17産生性T細胞さらには乾癬病態を促進させる。そこで、pDCの活性化をTIP-DCと比較しながら検討した。この際、pDCとTIP-DCの活性化を制御する薬剤を検討することによって、乾癬治療の展開に結びつけた。乾癬モデルマウスであるVEGF-A Tgマウスにおいて、耳翼に浸潤する細胞中にpDCとinflammatory DCが存在することをフローサイトメトリー (FACS)で確認した。次に、野生型マウスの脾臓細胞から、pDCをisolateしCpG-ODNで刺激し、IFN-αの産生を促した。一方、脾細胞中inflammatory DCを刺激することにより、TNF-・産生性CD11c+ CD11b int細胞が存在することを細胞内サイトカイン染色で確認した。上記の培養系を用いて、野生型マウスの脾細胞をCpG-ODNで刺激する際、カルシポトリオール、シクロスポリンA (CyA)、トリアムシノロンアセトニド(TA)を添加することにより、pDCのIFN-α産生を検討した。IFN-α産生は、CyAでは抑制されなかったが、他の2剤では抑制された。これは、T細胞のIFN-γ産生がCyA、TAで抑制され、カルシポトリオールでは抑制されないことと対比された。TNF-αの添加は、pDCのCpG刺激IFN-α産生を約30%抑制した。これらのことは活性型ビタミンD3が乾癬の治療薬として、pDCの観点からユニークな効果発現をしていることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
十分な達成度を得ている。当初、inflammatory DCについての検討を研究全体の約半分に置いていたが、pDCについての研究が膨らんだため、pDCについての実験が主になっている。これはpDCという乾癬病態においては未だ機能が十分判明していない細胞に対して世界的な興味が集まっており、我々の研究もその流れにあり、また知見が得られているというアドバンテージを鑑みた結果である。
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今後の研究の推進方策 |
野生型マウスの脾細胞をCpG-ODNで刺激する際、カルシポトリオール、シクロスポリンA (CyA)、トリアムシノロンアセトニド(TA)を添加することにより、pDCのIFN-α産生のみならず、Inflammatory DCのTNF-α産生も同様にこれらの薬剤の存在下で検討する。加えて、カルシポトリオールのpDCへの影響をシグナル伝達レベルも検討する。我々はすでにpDCのVEGF-Aやケメリンに対する走化性について、実験系を確立している。これを利用してpDCのケメリンに対する走化性において、カルシポトリオール、CyA、TAがどのような影響を与えるかをさらに検討する。
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備考 |
浜松医科大学医学部皮膚科学講座ホームページ http://www2.hama-med.ac.jp/w1b/derm/index.html
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