研究課題/領域番号 |
25293244
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
玉井 克人 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 寄附講座教授 (20236730)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 生体組織再生 / 骨髄間葉系幹細胞 / HMGB1 / 再生誘導医療 / 表皮水疱症 |
研究実績の概要 |
今年度の研究実績概要は以下の通りである。1)骨髄間葉系幹細胞血中動員因子HMGB1が認識して結合する間葉系幹細胞表面受容体を同定し、その間葉系細胞特異的ノックアウトマウスを作成した。2)骨髄間葉系幹細胞と骨髄間葉系前駆細胞それぞれの網羅的遺伝子発現解析を実施し、間葉系幹細胞特異的な遺伝子発現パターンの解析を行った。3)HMGB1により血中に動員された骨髄間葉系幹細胞の末梢組織集積メカニズム解明研究を進め、HMGB1が骨髄間葉系幹細胞表面にケモカインSDF-1の受容体CXCR4発現を誘導すること、末梢の阻血組織内血管内皮細胞で発現するSDF-1と間葉系幹細胞表面のCXCR4との相互作用により、阻血・壊死組織特異的に間葉系幹細胞が集積することを明らかにした。4)GFP骨髄移植マウス背部皮膚への表皮水疱症マウス(VII型コラーゲンノックアウトマウス)皮膚移植系を用い、骨髄から移植皮膚に集積した間葉系幹細胞がVII型コラーゲンを発現して表皮水疱症マウス皮膚基底膜に供給し、皮膚病態を改善することを明らかにした。5)皮膚に集積した骨髄由来間葉系幹細胞は抗炎症分子を発現して皮膚炎を抑制的に制御することを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度の当初の計画は1)骨髄間葉系幹細胞の損傷皮膚特異的集積メカニズム解明と、2)損傷皮膚に集積した骨髄間葉系幹細胞の機能解析であった。1)骨髄間葉系幹細胞の損傷皮膚特異的集積メカニズム解明:HMGB1により血中動員された骨髄由来間葉系幹細胞がCXCR4/SDF-1相互作用により損傷皮膚特異的に集積すること、CXCR4アンタゴニスト投与により骨髄由来間葉系幹細胞の損傷皮膚特異的集積が阻害されること、表皮水疱症への骨髄移植マウスモデルにおいて骨髄由来間葉系幹細胞の集積は表皮水疱症皮膚の再生に必須であることを証明した。2)損傷皮膚に集積した骨髄間葉系幹細胞の機能解析:損傷皮膚(植皮片)に集積した骨髄由来間葉系幹細胞は、短期的には抗炎症分子を放出して炎症を抑制的に制御し、長期的には皮膚構成細胞へと分化して組織再生を誘導していることを明らかにした。即ち当初の計画と比較し、おおむね順調に研究は進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度までの研究によりHMGB1血中投与により骨髄内から末梢循環に動員される間葉系幹細胞の皮膚再生誘導メカニズムとその役割が明らかになった。平成27年度は、種々の皮膚疾患モデルに対するHMGB1またはその骨髄間葉系幹細胞動員活性ドメインペプチド投与による治療効果を検証する。 1)HMGB1一次構造中の骨髄間葉系幹細胞動員活性ドメインの探索:既にHMGB1のN末端側に骨髄間葉系幹細胞動員ドメインがあることを明らかにしている。平成27年度はさらにHMGB1を種々の長さに欠失変異させたHMGB1変異体を作成し、骨髄間葉系幹細胞の遊走活性およびマウス骨髄から血中への動員活性を指標にして、新たなHMGB1の骨髄間葉系幹細胞動員活性ドメインを探索する。 2)HMGB1およびその骨髄間葉系幹細胞動員活性ドメイン血中投与による皮膚疾患治療効果検証:糖尿病性皮膚潰瘍モデルマウス、ブレオマイシン誘導性強皮症モデルマウス、接触性皮膚炎モデルマウス、アトピー性皮膚炎モデルマウスなどにHMGB1またはその骨髄間葉系幹細胞動員活性ドメインペプチドを血中投与し、皮膚病変部位に骨髄間葉系幹細胞を集積させることにより、骨髄間葉系幹細胞の持つ抗炎症・抗免疫作用、線維化抑制作用、組織再生作用の出現をコントロール群と比較し、HMGB1の皮膚疾患治療効果を検証する。
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