研究課題
本研究の目的はヒトiPS細胞から毛包上皮および間葉系細胞を誘導し、それらを用いて毛包構造を再現することである。上皮系に関してヒトiPS細胞からEGFを用いて毛包上皮幹細胞マーカーをより強く発現するケラチノサイトの作成を試みた。分化誘導の途中までは申請者らが確立した従来法と比較して形態学的にケラチノサイトにより近い細胞が観察されたが、細胞の生存率が不良であり、毛包再生実験には従来法を改良した方法で細胞を準備する方が適していることがわかった。間葉系に関しては、3系統の異なるヒトiPS細胞から前年度に確立したヒトiPS細胞から間葉系幹細胞の特性を備えた細胞を誘導し、さらにその細胞分画からCD271+CD90+陽性細胞を取り出し毛乳頭類似の特性を与えることが可能であることを示した。前年度の先行研究の確認実験としてヒトケラチノサイトと異なるヒトiPS細胞から誘導した毛乳頭相当細胞を混合しコラーゲンゲルに封入し免疫不全マウスの皮下に移植することを複数回試み毛包類似構造の再生効率を検討した。その結果、毛包特異的マーカーを発現し、電顕的にも毛幹様構造が確認される毛包類似構造は再生されるものの、ヒトケラチノサイト、毛乳頭細胞の混合移植による陽性コントロールと比較して再生成功率は半分以下であり、また移植部位あたりの再生される構造の検出頻度も低く分化誘導条件の更なる検討が必要であることが示唆された。ヒトiPS細胞からケラチノサイトへの誘導効率の問題から上皮・間葉系ともヒトiPS細胞での移植実験は困難であったため、in vitroでの3次元共培養を試みたが毛乳頭の特性維持培地を用いると立体構造の維持が困難であった。以上より、ヒトiPS細胞から毛包を構成する細胞を作成し、それらを用いて毛包を再構成する基礎的技術のいくつかを確立したが、今後さらなる改善が必要であることが明らかとなった。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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Differentiation
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日本臨牀増刊号「再生医療」
巻: 73 ページ: 193-198
http://www.skip.med.keio.ac.jp/frontline/voice/01/