研究課題/領域番号 |
25293247
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
橋本 隆紀 金沢大学, 医学系, 准教授 (40249959)
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研究分担者 |
戸田 重誠 金沢大学, 大学病院, 講師 (00323006)
吉原 亨 金沢大学, 子どものこころの発達研究センター, 助教 (00401935)
上田 なつ子(辻野) 筑波大学, 国際統合睡眠医科学研究機構, 助教 (40432166)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 脳神経疾患 / 死後脳研究 |
研究実績の概要 |
本年度は、昨年度に引き続き、KCNS3遺伝子発現を蛋白質レベルでの発現を評価するための対照例の前頭葉から抽出した蛋白サンプルを用い、Western Blotting法によるKCNS3蛋白質の検出を試みた。Western Blotting法では、昨年度にテストした4つの抗体のうちKCNS3の分子量に近いバンドが検出された2つに加え新たに2つの抗体を購入し、計4つの抗体(D-6, D-11, K-12, H-81, いずれもSanta Crus Biotechnologyから購入)を用いた。本年度は、検出されたバンドの信ぴょう性を評価するために、ヒト前頭葉サンプルと共にヒトKCNS3遺伝子を強制発現するHEK293細胞からの蛋白サンプルを電気泳動し、Western Blottingをおこなった。その結果H-81抗体で、HEK293蛋白サンプルと前頭葉蛋白サンプルに共通して約65kDaの位置にバンドが検出された。そこで死後経過時間の異なる症例(8.2, 15.5, 23.3時間)の前頭葉の蛋白サンプルを電気泳動し、H-81抗体でKCNS3と考えられるバンドを検出定量し、beta-tubulinに対する特異抗体で検出されるバンドの定量値との比を計算したところ、死後経過時間の違うサンプル間でもKCNS3/beta-tubulinの値は一定していることが判明した。以上の結果は、ヒト死後脳サンプルにおいてH-81抗体を用いたKCNS3の定量評価が可能であることを示すものである。また、KCNS3ノックアウトマウスの作成も、カリフォルニア大学デービス校のMouse Biology Project (MBP)との提携で順調に進み、KCNS3遺伝子に外来遺伝子を挿入し不活化したヘテロ体のマウスが完成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
前年度からのノックアウトマウス作成の遅れは、MBPへの委託により徐々に解消しつつあるが、平成26年度2月にKCNS3遺伝子を不活化したヘテロマウスが完成した段階にある。現在学内での系統認定を待っており、いまだ金沢大学に到着していない。ヒトの前頭葉サンプルにおけるKCNS3蛋白質の検出定量と対照例と統合失調症例の間の比較には、H-81抗体が有用と考えられるが、その特異性の最も優れた検証はKCNS3ノックアウトマウスでバンドが検出できないことを示すことにあるが、KCNS3ノックアウトマウスの入手後に可能となる。
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今後の研究の推進方策 |
ヒト死後脳サンプルにおけるKCNS3蛋白質の定量には、H-81抗体によるWestern Blotting法を用いるので、H-81抗体のKCNS3への特性をKCNS3ノックアウトマウスで確認する。その後、性別・年齢・死後経過時間などがマッチした統合失調症例と対照例のペア20組のそれぞれの前頭葉から抽出した蛋白質サンプルでWestern Blottingを行いKCNS3蛋白質の発現変化を調べる。 KCNS3ノックアウトマウスの解析では、ヘテロマウスを交配し、野生型、ヘテロ、ホモのノックアウトマウスを作成し、大脳皮質におけるKCNS3の発現をin situ hybridization法により定量して、遺伝子型を反映して野生型>ヘテロ>ホモの関係にあることを確認する。同様の交配を繰り返し同性同腹の野生型、ヘテロ、ホモのマウスのトライアドを5-6組得て、社会認知機能、作業記憶、潜在抑制、プレパルスインヒビションなどの統合失調症で異常が報告されている認知機能および行動を評価し、遺伝子型の間で比較する。トライアドのマウスは同じ日に同じ条件下で行動解析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
前年度からのノックアウトマウスの作成がずれこんでおり、カリフォルニア大学デービス校のMouse Biology Project (MBP)からのマウスの輸送費が発生していないこと、そしてヒト死後脳組織におけるKCNS3蛋白質の定量に用いるH-81抗体の特異性のノックアウトマウスを用いた最終確認が終了していないことで、解析に用いるH-81やbeta-tubulin行動、Western Blottingに要する試薬などの費用や、ヒト死後脳蛋白サンプルの冷凍空輸の準備のためのピッツバーグ大学への渡航や、空輸そのもの必要な費用がいまだに発生していないことなどによる。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度初頭に、カリフォルニア大学デービス校MBPよりマウスを空輸する。このマウスを用いてH-81抗体のKCNS3に対する特異性を確認した上で、統合失調症例および対照例の前頭葉組織から蛋白質サンプルの調整をピッツバーグ大学に出張して行い、Western Blotting法の解析に用いるために空輸する。
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