研究課題
基盤研究(B)
自閉症スペクトラム障害(AutismSpectrum Disorder, ASD)は治療法のない、生来性の疾患であり、中核症状である対人交流の問題(社会性障害)は、本人や家族を苦悩させるだけでなく、その持つ意味は社会心理学や哲学にも重要なつながりを有している。オキシトシンが生物の個体の相互関係に重要な働きを有していることが、近年、ますます明らかになってきている。オキシトシンがASDの治療に何らかの良い影響を与えるのではないかという観点から、この5年間、世界各地で長期投与の臨床試験が行われている。この際の問題は、対人交流の障害の改善をどのような指標でとらえるかということである。一方で、社会性の障害を自我意識の障害の観点からとらえることもできる。すると自我意識を何らかの指標でとらえることができるとすれば、治療評価の指標として使用できるかもしれない。私たちは、知能障害を有する成人男性の自閉症者を対象とする、オキシトシンを使用した臨床試験に、同時期、携わっていた。臨床試験中に隔週に受診する対象者とのplay sessionを繰り返すうちに、会話することのできない彼らの症状の、オキシトシン(あるいはプラセボ)による改善を、日常生活上の対人的な行動によってとらえることはできないかと考えた。今後、発展した形で行われる、知能障害のないASD者を対象とした臨床試験において、自らの内面をある程度語ることのできる彼らの体験と、日常生活の対人的な挿話の関連性を検討することにより、評価指標の作成につなげられる可能性が出てきている。さらに、アイトラッカーを使用した自動的心の理論課題の作成を行ってきた。この課題による結果と、日常生活上の対人的な行動の変化の関連性を検討する計画を立てた。
2: おおむね順調に進展している
自閉症スペクトラム障害者が、日常生活において示す対人的な交流の収集が、オキシトシンによる改善の指標に使用できるか可能性を示した。この点について論文化を進めている。
作成中の自動的心の理論課題の結果、従来から行っている自我に関する課題を用いたfMRI記録の結果との関連性を、オキシトシン使用時とプラセボ使用時とにおいて比較検討する。そのことにより、今後、発展した形で施行される予定のオキシトシン臨床試験に役立てる。
論文の英文校正や出版費に使用する予定の金額が次年度に持ち越されたため。論文作成を完成する。
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