研究課題
自閉スペクトラム症(Autism Spectrum Disorder, ASD)は、治療法のない、生来性の疾患であり、中核症状の一つである相互的な対人交流およびコミュニケーションの問題(社会性の障害)は、本人や家族を苦悩させるだけでなく、その持つ意味は哲学や社会心理学とも重要なつながりを有している。脳下垂体ホルモンであるオキシトシンが生物の個体の相互関係に重要な働きを有していることが、近年、次々と明らかになってきた。オキシトシンがASDの治療に何らかの役割を果たせるのではないかという観点から、この10年間、世界各地で長期投与の臨床試験が行われてきている。この際の問題は、社会性の障害の改善をどのような指標でとらえるかということである。われわれは社会性の障害を自我意識の障害の観点からとらえることができると仮定し、自我意識を何らかの指標でとらえることができれば、治療評価の指標として使用できる可能性を探ってきた。しかし、自我意識の障害を生物学的に直接にとらえることは容易ではないことが研究中に判明してきた。そこで、われわれの周辺で行われている関連研究と結び付け、社会性の障害を念頭に置いた検討を続けた。その内容を具体的に挙げる。第一に、同時期に行われていた知的障害を有する成人男性ASDを対象としたオキシトシンによる臨床試験のデータから、日常生活の中に、あるいは彼らとのplay sessionの中に、対人交流の変化として捉えられる可能性のある言動が得られる可能性を示唆した。第二にASD成人の視線解析により、ASD児童と同様に、ヒトよりもモノへの注視が多いことを提示した。第三にASD児童の自閉症重症度の時間経過の中での変化が、その母親の自閉症傾向との変化と関連している可能性を示した。これらの結果は臨床試験に社会性の障害の変化の評価に使用できる可能性があることを示している。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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http://kodomokokoro.w3.kanazawa-u.ac.jp/