研究課題/領域番号 |
25293250
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
橋本 亮太 大阪大学, 連合小児発達学研究科, 准教授 (10370983)
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研究分担者 |
安田 由華 大阪大学, 医学部附属病院, 特任助教 (20448062)
山森 英長 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (90570250)
藤本 美智子 大阪大学, 医学部附属病院, その他 (50647625)
梅田 知美 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 研究員 (00625329) [辞退]
藤野 陽生 大阪大学, その他の研究科, 助教 (20707343)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | Imaging GWAS / 統合失調症 / 大脳皮質体積 / 中間表現型 / 遺伝子多型 / 生物学的精神医学 / MRI / 脳構造 |
研究実績の概要 |
本研究では、Imaging geneticsという神経科学と遺伝学の融合研究分野の中で、Imaging GWASという全脳と全ゲノムを網羅的に調べる最新の解析法を用いてヒトの脳構造に影響を与える遺伝子多型を同定することで、統合失調症などの精神神経疾患の生物学的なメカニズムを明らかにすることを目的としている。統合失調症は、多因子遺伝疾患であり、疾患に関わる遺伝子多型を検出するために、数万の統合失調症サンプルを用いた全ゲノム関連解析(GWAS)により関連するZNF804A、miR137、MHC領域などの遺伝子多型がこれまでに同定されている。一方、統合失調症のリスク遺伝子は、その発症リスクを直接高めるのではなく、統合失調症にて認められる神経生物学的な障害である中間表現型を規定し、その結果、統合失調症の発症リスクを高めるという概念がある。我々は今回脳構造を中間表現型として用いた。 自己認識や感情に関与する上前頭回は統合失調症において体積の減少が報告されるため、上前頭回の体積と関連するSNPを同定する為に、統合失調症158例と健常者378例の脳MRIデータから、左右の上前頭回の灰白質体積を抽出しGWASを行った。1p36.12の5つのSNPsと右上前頭回の灰白質体積の間に、ゲノムワイドレベルで有意な関連があることを見出し、EIF4G3遺伝子のイントロンにあるrs4654899に最も強い関連が認められた。左上前頭回ではゲノムワイドで有意なSNPは見出されなかった。in silico解析により、rs4654899に代わるSNPがEIF4G3遺伝子の隣に位置するHP1BP遺伝子と2番染色体にあるCAPN14遺伝子の発現と強く関連し、これらの遺伝子はヒトの上前頭回に強く発現していることから、HP1BPとCAPN14遺伝子が、右上前頭回の灰白質体積の個人差に影響している可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、Imaging GWASという全脳と全ゲノムを網羅的に調べる最新の解析法を用いて、日本人におけるヒトの脳構造に影響を与える遺伝子多型を同定して、統合失調症をはじめとする精神神経疾患の生物学的なメカニズムを明らかにすることである。 統合失調症において、上前頭回は体積の減少が繰り返し報告されており、本疾患で障害されている自己認識や感情に関与するとされている。そこで、上前頭回の体積と関連するSNPを同定する為に、158名の統合失調症患者と378名の健常者の脳MRIデータから、左右の上前頭回の灰白質体積を抽出し、GWASを行った。その結果、1p36.12に位置する5つのSNPsと右上前頭回の灰白質体積の間に、ゲノムワイドレベルで有意な関連があることを見出した(p<5.0X10-8)。最も強い関連が認められたのは、EIF4G3遺伝子のイントロンにあるrs4654899であった。左上前頭回においては、ゲノムワイドで有意なSNPは見出されなかった。in silico解析により、rs4654899に代わるSNPがEIF4G3遺伝子の隣に位置するHP1BP遺伝子 (p=7.8×10-6) と2番染色体にある CAPN14遺伝子 (p=6.3×10-6)の発現と強く関連することが見出された。これらの遺伝子は、ヒトの上前頭回に強く発現していることから、HP1BP遺伝子とCAPN14遺伝子が、右上前頭回の灰白質体積の個人差に影響している可能性が示唆された。一つの部位において、論文としてまとまるまでの検討が出来、研究はここまで計画通り遂行できている。
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今後の研究の推進方策 |
Imaging geneticsにおいて同定された遺伝子多型は、その脳構造に異常をきたす精神神経疾患にも関連するとされ、精神神経疾患のリスク遺伝子の同定に重要な役割を果たすと考えられている。現在、上前頭回の体積と関連するSNPを同定する為に、158名の統合失調症患者と378名の健常者の脳MRIデータから、左右の上前頭回の灰白質体積を抽出し、GWASを行った。その結果、1p36.12に位置する5つのSNPsと右上前頭回の灰白質体積の間に、ゲノムワイドレベルで有意な関連があることを見出した(p<5.0X10-8)。最も強い関連が認められたのは、EIF4G3遺伝子のイントロンにあるrs4654899であった。左上前頭回においては、ゲノムワイドで有意なSNPは見出されなかった。in silico解析により、rs4654899に代わるSNPがEIF4G3遺伝子の隣に位置するHP1BP遺伝子 (p=7.8×10-6) と2番染色体にある CAPN14遺伝子 (p=6.3×10-6)の発現と強く関連することが見出された。これらの遺伝子は、ヒトの上前頭回に強く発現していることから、HP1BP遺伝子とCAPN14遺伝子が、右上前頭回の灰白質体積の個人差に影響している可能性が示唆された。一つの部位において、論文としてまとまるまでの検討が出来、研究はここまで計画通り遂行できている。 今後は、この結果が、共同研究施設のサンプルを用いて再現できるかどうかについての検討を行う。具体的には、1.5Tと3TのMRIは別々に、さらに同施設であっても異なるMRI機種を用いている場合は別々に分けて、大脳皮質体積と関連する遺伝子多型の検定を行い、その結果の統計量βと標準誤差(SE)を使いメタ解析により統合することで、日本人において大脳皮質体積に関わる遺伝子多型の同定を考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験を行うテクニシャンを募集したが適任者がみつからず人件費として使用する予定であった金額が未使用となった。またそれに伴い実験量が減少したことにより購入予定であった実験消耗品の購入を見送った。
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次年度使用額の使用計画 |
適任者が見つかり次第採用する予定であり、未使用額は人件費に充当する予定である。またそれに伴い実験活動を拡大させていく予定であるため必要な量の消耗品の購入を予定している。
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