研究課題/領域番号 |
25293254
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
横山 ちひろ 独立行政法人理化学研究所, ライフサイエンス技術基盤研究センター, 副チームリーダー (90264754)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 養育環境 / 非ヒト霊長類 / PET / fMRI |
研究概要 |
本研究では、生後の社会的環境が個体間コミュニケーション能力の発達に及ぼす影響を明らかにするために、非ヒト霊長類コモンマーモセットを用いて、以下の項目で実験を行う。1.脳機能イメージングと行動および音声データを用いた多変量解析、2.機能的神経ネットワーク解析、3.特定領域をターゲットとした介入実験による因果関係の証明 平成25年度は、1および2の一部について以下の実験および解析を行った。 1.【方法】養育環境(親哺育/人工哺育)、6月齢以降の社会的環境(集団飼育/個別飼育)の異なる条件で、コモンマーモセットのコミュニケーション障害モデル動物を作出した。幼少期(3月齢)、若年期(6月齢)および成熟期(2-4年齢)において、同年齢同性同種個体同士の対峙場面における行動と音声を測定した。また、若年期および成熟期において、セロトニントランスポーター(SERT)選択的トレーサーを用いたPET実験を行った。【結果】人工哺育個体は社会的接近行動が幼少期、若年期において減少していたが、成熟期において回復した。個別飼育の人工哺育個体では、回復しなかった。PET実験では、人工哺育個体は若年期において中脳、視床、小脳半球におけるSERT結合が有意に減少していたが、この減少は成熟期において回復した。個別飼育の人工哺育個体では、内側前頭皮質、後帯状回におけるSERT結合が減少傾向にあり、これらは、SERT結合が社会的接近行動スコアと関連する部位と一致していた。 2.【方法】15O-H2Oを用いた無麻酔下安静時脳血流測定のためのPET撮像システムを構築した。成熟期マーモセット2頭分のデータは標準脳にノーマライズ後、FSLの解析ツールMELODICを用いたICA解析を行った。【結果】延べ2頭6実験日分のデータ中51スキャンデータを使用し、デフォルトモードネットワークを含む3コンポーネントを抽出できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
環境要因によるコモンマーモセットのコミュニケーション障害モデル動物の作出に成功し、社会的接近行動と脳内セロトニン神経伝達減少との部位特異的関連性を明らかにした。後期社会環境が機能回復に役立つことも明らかとなった。音声コミュニケーションについての解析が遅れているがデータ収集はすでに完了している。機能的神経ネットワーク解析は、マーモセットのPET実験によるポジトロン標識水を用いた無麻酔下、安静時脳血流測定方法を確立した。fMRI実験システムの構築までには至っていない。
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今後の研究の推進方策 |
マーモセットを用いたコミュニケーション障害モデル動物の評価系は、より自動化した装置と解析を確立するために新たな行動解析システムを導入する。セロトニン神経伝達(PET実験)については新規のセロトニン1A受容体アゴニスト放射性トレーサーのセロトニンリリースのPET検出系としての有用性をマーモセットで評価する。機能的神経ネットワークの変化について解析するには、成熟期コントロール個体のテンプレートデータが必要と考えられる。脳血流PET実験に加えて、fMRI実験システムを構築する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度の施設内MRI装置およびPET装置の新規導入が決定したため、従来の装置とコンパチブルな装置作成の必要性が予想された。固定および刺激装置の購入等を次年度購入とするのが合理的であったため。 自動化した行動解析のための装置とソフトウェアの購入に使用する。また、本年度施設内に新規導入されるMRI装置およびPET装置に使用できるコンパチブルな固定および刺激装置の作成に使用する。
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