研究課題
本研究では、生後の社会的環境が個体間コミュニケーション能力の発達に及ぼす影響を明らかにするために、非ヒト霊長類コモンマーモセットを用いて、以下の実験を行う。1.脳機能イメージングと行動および音声データを用いた多変量解析、2.機能的神経ネットワーク解析、3.特定領域をターゲットとした介入実験による因果関係の証明。平成26年度はそれぞれの項目で以下を実施した。1.行動実験に関しては、養育環境(親哺育/人工哺育)、6月齢以降の社会的環境(集団飼育/個別飼育)の異なる条件で、コモンマーモセットのコミュニケーション障害モデル動物を作成し、各群において同種個体隣接する場面でのオペラント学習行動を測定するための装置を開発した。現在オペラント箱を移動箱として用いたBOXトレーニングを実施し実験条件への馴化が終了した。この後同種個体隣接場面における学習効率、接近行動(トラッキング)、自由行動下にテレメトリーシステムにて血圧測定を行う予定である。PET実験に関しては、セロトニントランスポーター(SERT)に加えて、新規セロトニン1A受容体アゴニストPETトレーサー[18F]F13714を用いた覚醒下PET実験を行い、基礎検討としてイソフルラン麻酔下実験と比較した。その結果イソフルラン麻酔下では海馬における結合能が上昇することが明らかとなった。2.無麻酔下安静時fMRI撮像のため専用のMRIコイルを装着できる固定器を作成した。固定器への馴化の後、撮像検討に入る予定である。3.組換えウイルスベクター二重感染を用いた受容体-チャンネルシステムによる回路特異的神経活動操作(DREADD)を行うため計画書申請を行った(申請中)。
3: やや遅れている
昨年度達成した、環境要因によるコモンマーモセットのコミュニケーション障害モデル動物を用いて、その評価に学習効率や血圧変動の指標を加える準備が進んだ。新規PETトレーサーをモデル動物評価に用いるため、基礎検討を実施した。機能的神経ネットワーク解析は、マーモセットの覚醒下fMRI実験を行うための準備を開始した。新規MRI導入に際し撮像条件の基礎検討に時間を要し、マーモセットに特化した条件検討が遅れている。特定領域をターゲットとした介入実験は、DREADDによる特異的神経活動操作を行うための遺伝子操作実験の準備を開始した。
コモンマーモセットの機能的神経ネットワークの同定、特定領域をターゲットとした介入実験を実施するためには、覚醒下fMRI撮像法およびDREADDによる特異的神経活動操作方法のより詳細な条件検討を進める必要がある。準備の進んでいるコミュニケーション障害モデル動物を用いた行動評価およびPET解析と並行して推進していく予定である。
新規MRI導入に際して撮像条件の基礎検討に時間を要し、マーモセットに特化した条件検討が遅れているため、覚醒下MRIの実施に際して必要な物品の購入が次年度に繰り越された。
覚醒下fMRI撮像法およびDREADDによる特異的神経活動操作方法の条件検討に必要な物品の購入は、コミュニケーション障害モデル動物を用いた行動評価およびPET解析に必要な物品購入と合わせて使用する計画である。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (5件)
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