研究課題/領域番号 |
25293254
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
横山 ちひろ 国立研究開発法人理化学研究所, ライフサイエンス技術基盤研究センター, 上級研究員 (90264754)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 社会行動 / 非ヒト霊長類 / PET / セロトニン / MRI |
研究実績の概要 |
本研究では、生後の社会的環境が個体間コミュニケーション能力の発達に及ぼす影響を明らかにするために、非ヒト霊長類コモンマーモセットを用いて、以下の項目で実験を行い結果を得た。 1.PET脳機能イメージングと行動指標を用いた多変量解析:行動実験に関しては、養育環境の異なる条件でコモンマーモセットのコミュニケーション障害モデル動物を作成し、社会行動の減少を確認した。具体的には、同種個体が隣接する場面での接近行動(トラッキング)およびオンライン血圧測定に成功し、社会的文脈に応じた定量的な変化をとらえた。PETイメージングについては、新規セロトニン1A受容体アゴニストPETトレーサー[18F]F13714と従来広く用いられているアゴニストトレーサー[18F]MPPFについて、覚醒下およびイソフルラン麻酔下にPET実験を行い結合活性分布を比較した。その結果、マーモセット脳内[18F]F13714 の結合活性の分布は[18F]MPPFとよく似たパターンを示したが、特に扁桃体や海馬において低く、大きな個体差を示した。覚醒とイソフルラン麻酔間の値において結合活性分布の再現性は極めて高かった。アゴニストトレーサーである[18F]F13714の結合は、Gタンパク質共役受容体であるセロトニン1A受容体の高親和性結合部位のみを認識している可能性がある。[18F]F13714結合活性分布は機能的側面を反映し、社会行動個体差との関連性の調査に適していることが示唆された。 2.MRI機能的神経ネットワーク解析:無麻酔下安静時fMRI撮像のため専用のMRIコイルの開発中に、データ内に高いノイズが生じたためコイル制作をやり直した。その結果、試験撮像において高い解像度で撮影が可能となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コモンマーモセットを用いた社会行動指標については、同種個体へ接近時間や社会的文脈による自律神経系の変動を定量的に測定し、環境要因によるコミュニケーション障害モデル動物における変化をとらえることに成功した。社会行動に係る神経機構解明のために、新規セロトニン1A受容体アゴニストPETトレーサーを用いてマーモセットPET実験を行い基礎的検討を進めたが、コミュニケーション障害モデル動物に適用するまでに至っていない。機能的神経ネットワーク解析については、マーモセットに特化したコイル作成と条件検討が遅れたが高解像度MRI実験を行う準備は整ってきた。当初計画していた特定領域をターゲットとした介入実験は遺伝子操作実験の準備段階にとどまっている。
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今後の研究の推進方策 |
コモンマーモセットの機能的神経ネットワークの同定、特定領域をターゲットとした介入実験を実施するためには、高解像度MRI撮像だけでなく覚醒下fMRI撮像法およびDREADDによる特異的神経活動操作方法についてより詳細な条件検討を進める必要がある。準備の進んでいるコミュニケーション障害モデル動物を用いた行動評価およびPET解析と並行して推進していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
PETデータと行動データを用いた解析についてほぼ実験を終了したが、MRI実験に必要なマーモセット専用コイルの開発中に、データ内に高いノイズが生じることが判明した。これを改善するべくコイルの制作をやり直したため、実験遂行に遅れが生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
来年度が実験個体の再育成およびMRI、神経回路操作実験に係る装置および消耗品、成果報告や打ち合わせに必要な旅費等に使用する。
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