研究課題
基盤研究(B)
本研究の目的は、難治性で慢性経過を辿りやすい概日リズム睡眠障害の高精度診断と治療最適化のため睡眠リズム調整の二大因子である生物時計の「リズム周期」と「リズム位相」の迅速診断法を確立し、患者固有のリズム障害特性をもとにしたテーラーメイド時間療法プログラムを作成することにある。ヒト生物時計リポーター遺伝子hbmal1::Luc(human bmal1プロモーター+ルシフェラーゼ遺伝子)を作製し、初代培養の皮膚繊維芽細胞と毛包細胞内の3~4日間のbmal1転写リズムデータから概日リズム周期tauを推定する末梢時計計測システムを確立した。末梢時計計測システムによる測定値と強制脱同調試験で測定したtauとの相関性を検証した。対照健常者17人、概日リズム睡眠障害・睡眠相後退型22名、フリーラン型15名から初代皮膚繊維芽細胞を採取し、末梢時計tauを測定した。その結果、フリーラン型患者群の末梢時計リズム周期は対照健常被験者群に対して有意に延長していることが明らかとなった。一方、睡眠相後退型ではtauの延長は認められなかった。末梢時計計測システムを用いて気分障害患者群や社会的ジェットラグ群の生物時計機能の評価を行い、睡眠・生体リズム障害のハイリスク群を同定する診断プログラムとしての有用性の検証を進めた。
2: おおむね順調に進展している
予定通り、ヒト生物時計リポーター遺伝子hbmal1::Luc(human bmal1プロモーター+ルシフェラーゼ遺伝子)による末梢時計計測システムを確立し、その性能試験を実施した。概日リズム睡眠障害を対象とした診断精度に関する臨床試験に着手した。
概日リズム周期と位相データを活用した最適化時間療法プログラムの有効性試験を実施する。睡眠相後退型患者を対象にして、高照度光およびメラトニンの照射・投薬時刻を最適化した4週間の時間療法プログラムを実施し、睡眠リズム(入眠・覚醒時刻)および生物リズム位相の位相調整効果を検証する。末梢時計計測システムで同定した生物リズム周期が治療反応性に関与するか検証する。
研究計画にある主要3課題の中で進捗がみられた基盤研究を優先して進めることとし、臨床研究を一時的に凍結した。その結果、謝金、物品費の支出が当初予定より減り、次年度に繰り越すことになった。平成26年度には、末梢時計システムで症状評価を行った睡眠障害患者を対象とした臨床試験を実施する。繰り越し分の人件費、物品費を当てる予定である。
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Sci Rep.
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Biol Psychiatry
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