研究課題/領域番号 |
25293256
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
柏倉 幾郎 弘前大学, 保健学研究科, 教授 (00177370)
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研究分担者 |
吉野 浩教 弘前大学, 保健学研究科, 助教 (10583734)
門前 暁 弘前大学, 保健学研究科, 助教 (20514136)
伊藤 巧一 弘前大学, 保健学研究科, 教授 (90398579)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 放射線防護剤 / TPO受容体作動薬 / 造血幹細胞 / 急性放射性症候群 |
研究実績の概要 |
平成26年度の研究実績の概要は下記の通りである。 1. c-Mpl作動薬ロミプロスチム(RP)投与によってもたらされる致死線量照射マウスへの造血系パラメータと消化管組織への作用を評価するため、RP 50μg/Kgを照射直後から3日間連続投与するプロトコルを選択し、照射直後からの初期段階での解析を試みた。生存個体間の末梢血球数及び大腿骨内骨髄細胞数において、致死線量照射後20日目までは薬剤投与・非投与に関わらず強い抑制が起こっていたが、照射後30日目では両者に統計的有意差はなくなり、回復が認められた。また、大腿骨内骨髄細胞の細胞表面抗原発現解析から、造血前駆細胞分画、骨髄系前駆細胞分画、赤血球系統分画において全体的に回復傾向がみられ、なかでも赤血球系統分画、顆粒球・マクロファージ分画やNK細胞分画の細胞数で有意な回復がみられた。 2. HE染色を施した十二指腸組織標本による病理学的評価では、致死線量照射薬剤非投与マウスの十二指腸では細胞の委縮や柔毛の並びの不均一さ、形態の歪さが目立つ一方、薬剤投与によってコントロールマウスの十二指腸と同様の形態が観察され、RPは造血系及び消化器系の放射線障害からの回復・再生に働く可能性が示唆された。 3. RPの至適投与量と耐用線量を検討したところ、7 Gy照射個体には50μg/Kgが最適であり、同濃度では8 Gy以上の照射個体は救命出来ず、RPの投与量を10倍増加させても救命出来ないことが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度の計画通り順調に進み、予定していた検討課題について概ねそれぞれ結果が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度の計画は、前年度に引き続いて「放射線曝露個体における作動薬の体内動態及び作用機序」及び「作動薬で救命した個体の長期観察による有害事象発生の検証」に関する研究を継続すると共に、放射線照射の標的となる骨髄細胞や腸管細胞のDNA 損傷と修復機構についても検討を行う。併せて、作動薬の臨床応用(粘膜損傷治癒再生等)への可能性に関する基礎的検討も開始する。作動薬の作用機序解明を分子レベルで評価する事を目的とし、具体的に下記の点について検討する。 1.作動薬の標的となる組織・細胞における遺伝子の変化に関する検討 2.作動薬の腸管組織中の幹細胞への作用 3.長期生存個体における発がん以外の心臓血管系や他臓器の異常に関する検証
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度使用額で本年度の目標成果が得られたから。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は、照射実験後の解析項目を増やすため、必要な試薬、器具類の購入に充当する。
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