研究課題
基盤研究(B)
本研究では、18F-標識フッ素イオンの電気化学的濃縮使い捨てチップを使用する迅速で効率的な多目的マイクロリアクター合成装置の開発を目指し、種々の18F-標識プローブをターゲットプローブとして取り上げ、新チップステージ開発、中間蒸発チップの開発、固相抽出カラムによる簡便精製、等の課題を3年間で解決する。研究開始の初年度で得られた成果を以下の通りである。① 種々のペプチド・タンパク質の18F標識に利用可能な18F標識フルオロメチルタイロシン(FMT)のマイクロリアクターによる合成と精製法を確立した。中間体であるCH2BrF生成とFMT合成用反応溶媒への捕集条件の最適化を行い、反応物をHPLCで精製した。その最終的な収率は3~10%、全合成時間は30分であった。今後この確立したマイクロリアクター合成条件でFMTを安定的に合成し、種々のペプチド・タンパク質合成に応用する予定である。② 我々が独自に開発した低酸素細胞イメージング剤18F標識FRP-170のマイクロリアクターによる合成と市販の使い捨て固相抽出カートリッジENVI-Carbによる精製法を確立した。合成収率は約55%、全合成時間は40分であった。得られたFRP-170は十分高い化学的・放射化学的純度を持ち、注射液として適するものであった。本法により迅速かつ高収率のFRP-170が合成でき、HPLCを使用せずに固相抽出法だけで簡便に注射液として精製できたことは、マイクロリアクター合成の有用性と実用性を実証したと言える。③ 反応途中における濃縮法の開発は本研究において重要なテーマであるが、これまでの経験に基づいて新たな中間濃縮(蒸発)チップを設計し試作した。今後FMT合成などに利用して評価を進める。
2: おおむね順調に進展している
当初ターゲットプローブとしてFLTを取り上げ高温加熱可能な反応ステージの開発を課題としていたが、まず多くの合成経験があるFMTとFRP-170を取り上げたため高温反応の必要性がなくなり、次年度回しとなった。また、今年度は実験に必要なサイクロトロン照射の割り当てが電気料金高騰のために減少し、実験回数がかなり不足して研究の進捗が予想を下回ってしまった。
平成26年度では、高温加熱ステージ以上に重要な18F-フッ素イオンの高濃縮用チップステージの開発を優先する。また、18F-フッ素イオン濃縮チップ内での濃縮-標識反応のワンチップ化も試みて一層の微量合成化を進める。実験回数に関しては、サイクロトロンの使用料金を本経費から支出して優先的に確保するとともに、学外の施設の積極的な利用を検討する。
すべて 2014 2013
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件)
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