研究課題
基盤研究(B)
アルツハイマー病の神経病理学的特徴の一つであるタウタンパク質の脳内異常蓄積を非侵襲的に評価できれば、精度の高いアルツハイマー病の早期診断や現在開発が進んでいる根治療法の客観的評価が可能になると期待されている。このような背景から、我々はPETにより脳内蓄積タウを非侵襲的に画像化することを目的とした2-アリールキノリン(2-AQ)骨格フッ素18標識タウプローブを開発した。本研究では、それらの精密機能解析及びさらなる改良を目指している。2-AQ型タウプローブの結合特性を精密評価するために、脳病理標本を用いた種々の結合試験(飽和結合試験、競合結合試験、結合濃度評価試験等)及びマクロ及びマイクロオートラジオグラフィーによって結合性評価を行った。その結果、タウプローブはタウ封入物の神経原線維変化に選択的に結合し、マクロレベルではタウの分布に正確に一致する形で脳組織に結合することが確認された(アミロイドの分布とは一致しなかった)。一方、タウプローブの改良に関しては、特定の立体構造を導入することでタウに対する結合親和性及び結合選択性(対アミロイド)を向上させることができた。この改良型プローブは、その組織結合量が組織中のタウの存在量と高い相関性を示すことが確認された。オートラジオグラフィーにおいてもタウの分布を反映する結合性を示した。また、脳内動態性も好ましい特徴を示した。これらの結果から、この改良型プローブはタウイメージング用プローブとして有用性が高いと期待できる。
2: おおむね順調に進展している
本研究では、アルツハイマー病患者脳標本を用いた種々の結合試験及びオートラジオグラフィー技術によって、目的とする独自に開発したタウプローブの病理性タウに対する結合性を精密に評価することができた。また、タウプローブの部分構造を改変することで、同じく目的とするタウプローブの性能を向上させることにも成功した。このように研究目的を達成できているので、順調に研究は進展していると判断できる。
当初の計画通り、改良型プローブの完成を目指して、さらに構造活性の関係を検証し、タウプローブとしての最適化構造を決定する。そして、これまでと同様に病理脳標本を用いた種々の結合試験及びオートラジオグラフィー技術によって、タウプローブとしての性能を明確にする。さらに安全性等も評価し、探索的臨床研究への展開を目指す。さらに、臨床PETにより得られる画像情報を種々の方法で解析し、タウプローブとしてのインビボ精密機能評価を実施する。
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J Labelled Comp Radiopharm.
巻: 57 ページ: 18-24
10.1007/s00259-013-2681-7
Brain
巻: 印刷中 ページ: 印刷中