研究課題
アルツハイマー病に特徴的な二大病理変化の一つである神経原線維変化は、リン酸化されたタウタンパク質が異常凝集を起こして形成される。その凝集物の脳内蓄積を非侵襲的に測定できれば、アルツハイマー病の早期診断や治療薬開発が格段に進展すると期待されている。我々は、PETによりそのタウ凝集体を画像定量解析する技術開発に取り組んでいるが、本研究では、そのPET用タウイメージングプローブのさらなる改良とその特性評価を目的としている。本年度は、2-arylquinoline(2-AQ) 骨格のアリール基部分の構造を変化させた誘導体群を合成し、その構造最適化を試みた。脳内動態性については、正常ICRマウスに尾静脈内投与して、2、5、10、30、60、120分後の体内分布試験により評価した。また、結合性の精密機能解析では、新規誘導体の結合特性を明確にするために、脳病理標本を用いた飽和結合試験、競合結合試験、結合濃度評価試験、結合・解離速度評価試験を実施した。これらの結果、脳内動態性については、アリール構造をピリジンに変換することで、投与直後の取り込み量は若干低下するものの、その後の放射能の脳内からの消失性は向上し、脳内動態指標である取込み率の2分/60分比は大幅に大きくなった。一方、結合特性は、親和性は若干低下する傾向を示したが、白質への非特異的結合が低下し、オートラジオグラフィーでは、タウ凝集体蓄積部位が高いコントラストで描出された。これらの結果から、新規誘導体をPET撮像に用いた場合、より短い時間で高いコントラストのタウ蓄積画像を得られことが期待できる。そこで実際に探索的臨床PET研究をで評価したところ、THK5105やTHK5117よりも短時間でダイナミックレンジの広いPET画像が得られた。以上、本年度の研究によってより実用性に優れたタウPETプローブの改良に成功した。
2: おおむね順調に進展している
本年度は、昨年度に引き続きTHKタウプローブの構造を改変し、タウイメージングプローブとしての性能の向上・最適化を目指したが、結果として昨年度に改良したプローブよりも高性能なタウイメージングプローブに改良することに成功しており、さらに探索的臨床研究でも有望視できるタウイメージング成果が見られた。これらの成果は当初計画していた目標に相当するものであったため、現在までの達成度は(2)おおむね順調に進展していると判断した。
研究はおおむね順調に進んでいるため、当初の計画通り、実用性の観点から最適化したタウイメージングプローブの完成を目指す。将来的な臨床研究拡大の実現を視野に入れ、最適化タウイメージングプローブの実用的標識前駆体合成法および標識合成システムとプロトコールを確立すると共に、イメージング精度に直結するタウイメージングプローブの詳細な性能評価を光学異性体間で比較し明確化することを目指す。
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