研究課題/領域番号 |
25293263
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
長縄 慎二 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (50242863)
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研究分担者 |
山崎 雅弘 名古屋大学, 医学部附属病院, 病院助教 (40595526)
鈴木 耕次郎 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (60378148)
岩野 信吾 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (90335034)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | メニエール病 / 内リンパ水腫 / MRI |
研究実績の概要 |
メニエール病はめまい発作、難聴、耳閉感を症候の主体とする良性疾患であるが、現実には、非常に多くの患者の社会的生活を奪う反面、決定的な診断法と治療法が未だにない厚労省指定の難病である。約140年前、フランス人医師メニエールが本疾患を発見し、約70年前には大阪大耳鼻科教授の山川が同僚であった産婦人科教授を死後、剖検することによりメニエール病の本態が内リンパ水腫であることを示した。2007年、ようやく我々が世界ではじめてメニエール病患者における内リンパ水腫を鼓室内Gd-DTPA注入後のMRIで画像化することに成功した。我々は世界に先駆けて、MRIによるメニエール病の内リンパ水腫検出法と評価法の開発を進め客観的診断法の確立をしてきた。 1700例以上の経験から、メニエール病患者では必ず水腫があるが、水腫があっても必ずしも症状のない患者が存在することがわかってきたが内リンパ水腫がめまい発作を起こすメカニズムは依然、謎であり、その解明なしには根本治療法開発も困難である。今回の目的は、先端画像技術を開発、応用することで、めまい発作の発生メカニズムを解明することである。昨年度までで、内リンパ水腫描出のためのMRIとしての基本的な方法論を確実なものとし撮像時間短縮とその影響の検討、片頭痛や迷路奇形などの他疾患がある場合の内リンパ水腫への影響と評価方法の開発と検討を行った。本年度は、健常者における至適撮像時間のさらなる検討をおこなった。また他施設への本法の普及と、世界の多施設での状況の検討のための総説執筆など国際共著で行った。延長した次年度(最終年度)には、メニエール病と関連の深い、突発性難聴でめまいを伴うものの取得済データ解析の継続、耳硬化症症例における取得済データの解析の継続をおこなって、臨床的にメニエール病の辺縁疾患における水腫の解析をおこなって、病態解明につなげる予定としている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度までで、面積測定法、体積測定法の確立、同一患者で複数回の撮像をした症例の解析や、外側半規管低形成症例での水腫解析法の新規提案、時間短縮のためのパルスシークエンスのさらなる改良と従来法との整合性評価など様々な成果を上げてきた。しかし、申請書の段階では最終年度の平成27年度にてめまい発症機構の解明にめどをつける予定であったが、迷路奇形を伴う症例での内リンパ水腫判定基準策定に、予想以上に手間取ったこと、脳と迷路の老廃物排泄機構という新たな概念をめまい発症機構解明のための検討に加える事になったこと、それらのため、耳硬化症や突発性難聴といった類縁疾患の評価法策定が、次年度にずれこむことになった。しかし、これらの画像データ取得は済んでおり、データ解析と、成果発表、論文執筆を残すのみであり、顕著な遅れではない。
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今後の研究の推進方策 |
脳と迷路の老廃物排泄機構がメニエール病のみでなく、アルツハイマー病などに重要な役割を果たしていることがわかってきたので、画像により老廃物排泄機構を評価できるような方策を検討する。迷路からの造影剤排泄時定数の推定や、脳老廃物排泄機構の入り口である血管周囲腔の造影効果評価についても、すでに得られたデータを解析することによりすすめる。耳硬化症や突発性難聴、遅発性内リンパ水腫といったメニエール病類縁疾患についても、解析をすすめる。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究代表者が主にデータ解析を行っため、研究補助者への謝金が少なかった。 健常者の撮影が、一部、他疾患での造影MR後に同意を得ることで行われたので、造影剤使用料が節約できた。また、研究代表者の時間的都合で、予定していた海外出張がひとつ減った。これらのことで、次年度使用額が発生した。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は、論文執筆のための、英文校閲料や研究補助者への謝金が多くなり、成果報告のための国内、外国旅費で使用する予定である。
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