研究課題/領域番号 |
25293268
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
立花 克郎 福岡大学, 医学部, 教授 (40271605)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 超音波 / 酸化チタン / 癌細胞 / 光触媒 |
研究概要 |
本研究課題では超音波の特殊な効果に着目し、微小気泡化チタニア・シリカ水溶液と高密度焦点式超音波(以下HIFU)を併用による新しいがん治療法の確立を目指した。実験に使用する酸化チタンを加工したチタニア・シリカ水溶液は、酸化チタンと酸化ケイ素が結合した過酸化結合を有するチタニア・シリカ複合体からなる高分散性の水溶液光触媒の各濃度における細胞への毒性試験を行った。その結果、チタニア・シリカ複合体が溶液中で均一に分散し、沈殿しにくく、細胞毒性は認められなかった。また、HIFUとチタニア・シリカ複合体の併用でがん細胞の殺傷効果のデータを得ることができた。細胞はヒトリンパ腫細胞株U937を用いた。培養液は10%FBSを添加したRPMI1640を使用し、細胞濃度が1×106cells/mlに調節した。96wellの細胞培養用プレートに1wellあたり細胞浮遊液180μlと、コントロール群、超音波照射群ではPBS20μlを、酸化チタン投与群では酸化チタンを20μl加えた。また、チタニア・シリカ水溶液の高速攪拌法による微小気泡化を試みた(6000回転)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
微小気泡化チタニア・シリカ水溶液と高密度焦点式超音波(以下HIFU)を併用による新しいがん治療法の開発に必要な基礎実験を本年度行った。当初から予定した、チタニア・シリカ水溶液の毒性試験を行った結果、チタンAタイプとPタイプの比較では、明らかにPタイプに強度の毒性が認められた。一方、チタンAタイプは試験した各濃度では細胞毒性は認められなかった。HIFUとチタニア・シリカ水溶液(非バブル化)の基礎実験で超音波単独群に比べ、チタンの併用でがん細胞の死滅が多く認められ、毒性試験と超音波の影響に関する当初の目標に達することができた。チタニア・シリカ水溶液のバブル化実験に関しては、現段階ではバブルの生成を確認することができなかった。各種の溶解液と濃度を試みるも、今回使用した顕微鏡ではバブルを検知することはでききなかった。
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今後の研究の推進方策 |
当初の目標であるチタニア・シリカ水溶液のバブル化は現段階で生成に至っていない。バブルの測定方法に問題があるのか、最初からバブルの生成に至っていないか、本年度のデータからは判断がつかず、今後も追加実験を行う必要がある。現在、使用している顕微鏡ではバブルの観測が困難で、多くの時間が要する。今後は高性能な顕微鏡を新たに購入しすることで、実験の効率化を図りる予定である。一方、チタニア・シリカ水溶液のバブル化を容易にするために、原液を希釈する溶液に工夫が必要と思われる。次年度は粘度が高い溶液でバブルが生成しやすい対策を講じる予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
現在、使用している旧式の顕微鏡ではがん細胞とチタニア・シリカ水溶液バブルを詳細に観察することができず、限界に達している。この問題を解決するには新しい顕微鏡(新偏光フィルタと新しい光源)に切り替える必要がある。新たに顕微鏡を購入するために次年度使用額が生じた。新しい顕微鏡を使うことで、実験が飛躍的に進むものと予想する。 上記理由により新しい光学顕微鏡の購入を計画。新しい偏光フィルターと光源を有する光学顕微鏡の購入費に使う予定である。その他、追加の細胞培養に必要な試薬の消耗品など。
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