研究課題/領域番号 |
25293269
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研究機関 | 独立行政法人放射線医学総合研究所 |
研究代表者 |
張 明栄 独立行政法人放射線医学総合研究所, 分子イメージング研究センター, プログラムリーダー (80443076)
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研究分担者 |
河村 和紀 独立行政法人放射線医学総合研究所, 分子イメージング研究センター, チームリーダー (50401766)
藤永 雅之 独立行政法人放射線医学総合研究所, 分子イメージング研究センター, 研究員 (70623726)
山崎 友照 独立行政法人放射線医学総合研究所, 分子イメージング研究センター, 研究員 (80627563)
謝 琳 独立行政法人放射線医学総合研究所, 分子イメージング研究センター, 研究員 (30623558)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 核医学 / mGluR1 / 腫瘍 / 放射性プローブ |
研究実績の概要 |
代謝型グルタミン酸受容体1型(mGluR1)が脳及びメラノーマや乳がんなどの多くの腫瘍に高く発現することが知られている。申請者らはPositron emission tomography (PET、陽電子断層撮像法)を用い、mGluR1の生理機能や疾患との関連を画像化する研究を進めている。現在まで申請者らは脳内mGluR1の新規PETプローブを開発し、世界で初めて臨床研究を開始した。今回、申請者らはmGluR1をターゲットとして腫瘍の診断と治療ができる新規放射性プローブを創出し、mGluR1が腫瘍発生における役割を解明し、臨床へ向ける質的な腫瘍画像診断研究を目指す。 H25年度まで申請者らは、メラノーマの診断及び治療薬による効果の判定に有用なmGluR1のPETプローブ[18F]FITMを開発した。H26年度申請者らは、[18F]FITMが脳内への移行性を抑えながら、高い腫瘍特異性を持つPETプローブの開発を目的として、FITMのフッ素原子を塩素、臭素及びヨウ素原子に変えた誘導体1-3を設計し、N-デスメチル体を[11C]CH3OTfとの反応によって[11C]1-3を合成した。mGluR1が過剰に発現するメラノーマ細胞B16F10をC57BL/6マウスに移植し作製した担癌マウスに対し、[11C]1-3による放射能分布試験及びPETスキャンを行った。その結果、分布試験では、[11C]1-3がB16F10腫瘍巣に高い放射能集積を示した。特に[11C]3は投与後60分経過後の放射能濃度が腫瘍で4.61% ID/gで、脳で0.57%ID/gであった。また、腫瘍/脳の放射能集積比は[18F]FITMが0.58に対し、[11C]1-3がそれぞれ1.04、 1.73、8.03であった。さらに[11C]3を投与したPET集積画像では、腫瘍に顕著な放射能の集積が見られ、非放射性のFITMの前投与によってその集積が大きく低下した。以上の結果から、[11C]3は、ヨウ素原子を有するため、内用療法のプローブとして望ましい特性を備えていることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
内用療法への展開が有望であるmGluR1の新規放射性薬剤 [11C]3を開発することができたため。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度から得られた結果を基にして、今後申請者らは、 [11C]3に対し、本施設で利用可能の131Iを使用し、標識合成を試みる。その際に至適な合成条件を確立するため、標識原料の量、酸化剤の種類/量などを検討する。また131I-標識化合物が合成できたら、腫瘍への放射能取り込などを調べる予定である。 また、新たな18F、11C標識化合物を開発すると同時にメラノーマ以外の腫瘍に対しても検討を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新規放射性プローブの特性を評価するため、mGluR1が高く発現する数種の原発及び全身転移動物モデルの樹立がH27年度に変更したことから、昨年度の助成金は繰越を生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
昨年度から得られた結果を基にして、H27年度は治療に使用可能な数種の放射性プローブを設計し、合成及び評価を行う予定である。そのため、予定している数種の担癌モデルの樹立、また標識原料、消耗品および実験動物の大量使用によって、購入費用は高くなるため、昨年度の繰越分と合わせて研究を進めていく必要がある。
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