研究課題
(全体構想) 本研究は肝移植における臓器不足の解消を目指し、脂肪肝グラフトの修復法を確立するために行う。低温酸素化灌流、重水含有緩衝液、水素ガス投与の至適条件を見出し、これらを組み合わせた肝灌流修復法を確立する。また、至適条件で処置されたラット脂肪肝を同系同所性に移植し有効性を確認する。また、保護メカニズムを肝構成細胞のレベルで精査する。(結果)まず、ラット正常肝を冷保存後に低温酸素化灌流(HOPE)し、至適な灌流量、圧、酸素分圧を探索した。単離肝灌流装置による37℃で再灌流し、組織障害、逸脱肝酵素、胆汁産生量、酸素消費率等により効果を評価した。既存の保存液を用いてHOPEを行い、さらに、HOPE中、再灌流時に水素ガスを投与し、臓器保護効果を比較した。既存液で至適と判断された条件を用いて、同様の検討を自作の灌流液でも行った。その結果、新液は既存液よりも障害を軽減し、再灌流時の水素ガス投与によって相加効果が得られた。しかし、HOPE中に水素ガスを投与すると灌流圧は低下したが、障害軽減の上乗せ効果は認められなかった。さらに、同様の検討をラットの脂肪肝で行ったところ、既存液ではHOPEにより単純冷保存よりもグラフトが障害されたことから、非生理的温度下での酸化的リン酸化が条件によってはむしろ臓器障害を増強することを示した。一方、自作液では単純冷保存と比べ、非劣性を示した。これらの結果から、新規肝灌流液による低温酸素化灌流、再灌流時水素ガス投与は正常肝の長期冷保存による障害を軽減することが示された。しかし、脂肪肝の修復には、さらに強力な保護機序が必要と考えられた。
3: やや遅れている
正常肝の長時間冷保存後の再灌流のモデルで観察された新規灌流液、水素ガス投与の併用効果が、脂肪肝では不十分であった。使用した急性の脂肪肝モデルの適否を含め、モデルの再検討を要したため、予定よりもやや遅れたものである。
脂肪肝では肝重量が正常肝の1.5-1.7倍になるため、ネット上に静置した肝臓では自重により脈管が圧迫されていることが、灌流の有効性を損なっている可能性が考えられた。それゆえ、自重による肝内脈管の虚脱を防ぐことを目的に肝臓を液中に浮遊させた状態で灌流するモデルを検討する。また、低温による脈管収縮を回避するため、あるいは、低温によるストレス応答に関与する遺伝子発現、転写、翻訳、あるいは、活性調節の失調を回避するため、4-7℃ではなく、22-27℃を検討をの中心温度として、同様の検討を行う。
すべて 2014
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