研究課題/領域番号 |
25293273
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
小山 博之 東京大学, 医学部附属病院, 准教授 (10241994)
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研究分担者 |
宮田 哲郎 東京大学, 医学部附属病院, その他 (70190791)
保科 克行 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (90571761)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 人工臓器 / 再生医学 / 外科 / 細胞・組織 |
研究実績の概要 |
大型で高機能な三次元再生組織を構築するためには、栄養血管網の付与が不可欠であるが、これらを実現する有効な方法は確立されていない。研究担当者らは血管新生を誘導するマトリックス材料(血管新生制御マトリックス)とともに多数のスフェロイド(直径数百μの細胞集塊)を移植して移植母床から各スフェロイド間に血管網を発達させることにより、トータルとして栄養血管網付き三次元再生組織を構築する方法を提唱してきた。本研究では、スフェロイドの機能低下を回避しつつ迅速に栄養血管網誘導をするシステムの開発を目指している。 1.構造体内潅流システムの最適化研究:血管新生制御マトリックスに多数のスフェロイドを包埋した構造体内に中空糸を複合化し、構造体内での培養液潅流を可能とする構造体内潅流システムの最適化研究を継続した。In vitroおよびin vivoの検証により、構造体の基盤である血管新生制御マトリックスが、部位により濃度ムラが存在するため、均一な細胞増殖と培養液潅流が得られ難くなっていることが判明した。そのため、血管新生制御マトリックス作成のための架橋剤に改良を加えることにより濃度ムラを解消し、システムの性能改善を達成した。 2.構造体内における血管様構造の構築実験:構造体内への栄養血管網誘導を迅速化するため、血管新生制御マトリックス内に血管内皮細胞を包埋して予め三次元血管様構造を構築する実験を継続した。血管内皮細胞の培養日数や包埋密度などの条件による違いを検討することにより、良好な三次元血管様構造を構築するための最適条件を確定した。 3.構造体内潅流システムを用いた三次元再生組織の生体内構築実験:前記の構造体内潅流システムをラットモデルへ移植し、生着した再生組織を検証した。潅流速度など様々な条件を試みたが、構造体全体の生着を得るには至れず、さらなる大型化へのステップに進むことができなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
1.構造体内潅流システムの最適化研究:血管新生制御マトリックスの改良により、構造体内の濃度ムラが無くなり、潅流システムとしての最適化が達成できた。そのため、この項目は順調に展開していると考えられる。 2.構造体内における血管様構造の構築実験:構造体内に良好な三次元血管様構造を作るための、血管内皮細胞の条件を明らかにすることができた。そのため、この項目も順調に展開していると考えられる。 3.構造体内潅流システムを用いた三次元再生組織の生体内構築実験:様々な条件で検討したにも関わらず、構造体内潅流システムにより構造体全体の生着を得るにはいたらなかった。このため、大型化へ向けた研究を展開することができず、やや遅れていると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
H25年及びH26年度で最適化した「構造体内潅流システム」と「構造体内における血管様構造組み込み技術」を基盤として下記の研究を実施する。 1.構造体内潅流システムを用いた三次元再生組織の生体内構築 H26年度の研究において、心筋細胞又は肝細胞スフェロイドを包埋した再生組織構造体(S/M構造体)に構造体内潅流システムを適応し、ヌードラットモデルへ様々な条件で移植したものの、S/M構造体全体の生着を得ることができなかった。そのため、本年度はS/M構造体内に血管内皮細胞を同時に包埋することによって、予めスフェロイド周囲に血管様構造を構築した後にモデルへ移植するとこにより、構造体全体の生着を可能とする条件検討を行う。これに加え、S/M構造体内に塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)を添加ことにより、構造体への血管誘導の強化も試みる予定である。 2.構造体内潅流システムの大型化にむけた装置改変とin vivo評価 前記検討の結果をもとにして、より大型のS/M構造体にも対応可能な大型化構造体内潅流システムを作成する。試作品は、逐次S/M構造体を組み込み、ヌードラットモデルへの移植を実施して生着の評価を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
「現在までの達成度」欄でも述べたが、H26年度研究では、作成した潅流システムにより構造体全体を生着させることができず、大型化へ向けた研究への展開ができなかった。そのため、構造体内潅流システムの大型化にむけた装置改変研究で使用を予定していた予算が未使用となり、次年度使用分として繰り越すこととした。
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次年度使用額の使用計画 |
H27年度では、H26年度で実施できなかった構造体内潅流システムの大型化にむけた装置改変研究をもあわせて行う予定である。大型化への装置改変では様々な素材をテストすることが想定されるため、その購入費用として次年度使用分を使用する計画である。
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