研究課題/領域番号 |
25293276
|
研究種目 |
基盤研究(B)
|
研究機関 | 京都府立医科大学 |
研究代表者 |
五條 理志 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (90316745)
|
研究分担者 |
上 大介 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (80415588)
八木 洋 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (20327547)
竹原 有史 旭川医科大学, 医学部, その他 (90374793)
的場 聖明 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (10305576)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 脱細胞 / 心臓 / 界面活性剤 / 再細胞化 / 移植 |
研究概要 |
現状の手法を用いた脱細胞化組織は移植後に血栓形成による血流障害を引き起こすことが、共同研究者らの研究による明らかとなった。この原因は実質臓器を脱細胞化する際に用いる界面活性剤(ドデシル硫酸ナトリウム, SDS)による影響が考えられる。SDSは脱細胞化の際に細胞外マトリックス上に存在する微細構造を破砕とグリコサミノグリカンを除去することが報告されており(Crapo PM. Biomaterials. 2011.)、これらが原因の一つとして考えられる。そこで我々はこの解決が優先事項であると判断し、当初の目的としていた大動物(ブタ)における脱細胞化の条件検討の前に小動物(ラット、マウス)にて新たな界面活性剤を用いた脱細胞化の条件検討を試みた。 ラット心臓を用いて二種類の界面活性剤とSDSを用いて界面活性剤の脱細胞化能を比較検討した。検討に利用した界面活性剤のうち、一つは脱細胞能が弱く、12時間の界面活性剤を循環させても細胞が残存していた。もう一方はSDSと同レベルの脱細胞化が可能であったため、組織学的解析を試みた(この界面活性剤をDetergent Xとする)。この結果、脱細胞化の基準とされているDNAの残存量は基準値を下回り、DAPI染色による組織内に核の存在は観察されなかった。また細胞外マトリクス(コラーゲン、フィブロネクチン、ラミニン)も残存していた。走査型電子顕微鏡にて微細構造を観察したところ、Detergent Xにて脱細胞化した組織は明瞭な微細構造を維持しており、アルシアンブルー染色はDetergent Xにて脱細胞した組織のみ陽性であることが明らかとなった。加えてbasic FGFやグルコサミノグリカンも有意差をもって残存していた。次に血小板粘着法にて血栓形成に関わる因子の解析をvitroにて試みたところ、Detergent XはSDSで脱細胞化した組織より高い抗血栓能を有する組織を作製できることが明らかとなった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究実績の概要に記したように、当初の予定と異なり大動物の系の前に小動物の系を用いた抗血栓能を有する脱細胞化組織の作製を検討したためである。この問題点の検討は大動物を用いた系にも大きな影響を与えると考えたため、優先的に解決に取り組んだ。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究は、脱細胞化した臓器をどのように再細胞化するのかという重要な課題が存在する。この解決策は臓器によって異なっており、心臓では最適な再細胞方法は未だ存在しない。我々も事前の検討として複数の細胞株を用いて脱細胞化組織にそれぞれ播種したところ、脱細胞化組織内に細胞の偏りが存在することが明らかとなった。これは重大な問題であり、機能を維持した再細胞化組織の移植するために解決する必要がある。我々はこの解決策の検討も小動物(ラット、マウス等)の系を用いて解析していく計画を立てている。またこの際、播種する細胞種や細胞数の最適化も併せて行っていく。
|
次年度の研究費の使用計画 |
前年度の緊急な計画変更に伴い、必要な機材やマテリアルの購入を見送ったため、当初の計画とは異なる請求金額となった。本年度は、前年度の結果をもとに軌道修正した実験計画を考案したが、新たな実験系を組む必要がある。そのため、この計画に必要な金額として前年度分の基金の繰越金を充填することにした。 新規界面活性剤を用いた抗血栓性の高い脱細胞組織の総合的な評価を各動物種において試みる。繰越金はこれらの実験動物や必要な機材の購入に充填する。さらに脱細胞組織への再細胞化を含む臓器内への再移植を目的とした実験系にも利用する。
|