研究課題
基盤研究(B)
本研究では膵島移植の手法を用い、移植膵島に於けるインスリン産生細胞の再生誘導を明らかにすることを目的とした。予備実験で明らかとなった新規知見、すなわち高血糖による膵島細胞死がReceptor for Advanced Glycation Endoproducts(RAGE)を介した経路による治験に基づき、RAGEノックアウトマウスの単離膵島をドナーとして用い、STZ糖尿病同種同系マウスの腎皮膜下移植の実験系で移植膵島の再生に関し以下の成果を得た。#1.移植膵島機能。野生型マウス単離膵島をドナーとして用いる場合、一匹のドナーから単離できる膵島数、200個の移植でSTZ糖尿病マウスレシピエントの血糖は正常化したが、50個の移植では高血糖で推移した。対照的に、RAGEノックアウトマウス膵島がドナーの場合、50個膵島の移植でSTZ糖尿病レシピエントの血糖は正常化した。#2.組織学的検索。野生型 vs RAGEノックアウトマウスの移植膵島を光顕ならびに電顕で観察した。移植後60日目の光顕で野生型移植膵島は明らかに変性し、免疫染色でβ細胞の脱顆粒が認められたが、RAGEノックアウト移植膵島は正常形態を示した。移植後14日目の電顕像では野生型膵島β細胞の細胞質に著しい空胞変性があったが、RAGEノックアウトマウス移植膵島β細胞は正常形態を保持していた。#3.Soluble form RAGE(sRAGE)を用いた移植膵島障害の制御。RAGEの効果をブロックするsoluble RAGE(sRAGE)を実験に用いた。野生型単離膵島に移植前in vitroでsRAGEを作用させ、ドナーとして用いた。sRAGE処置野生型膵島50個の移植でSTZ糖尿病マウス血糖は正常化した。#4.米国より搬送されたヒト単離膵島の至適ドナー膵島数の決定。STZ-糖尿病NODscidマウスの腎皮膜下に単離ヒト膵島を移植し、移植後レシピエント血糖が正常化しない最大の膵島数をドナー膵島数(marginal mass)として決定する必要があり、実験の結果、1000 IEQ(Islet Equivalent)であることが判明した。
2: おおむね順調に進展している
当初25年度の研究実施計画として#1、同種同系野生型vsRAGE欠損マウス移植膵島再生に関する解析。(1) 移植膵島機能評価 、(2) 移植膵島の組織学的(光顕、電顕)解析、(3) 移植膵島ホルモン含有量測定、#2.米国より搬送された単離ヒト膵島のSTZ-糖尿病NODscidマウスへの移植実験であったが、研究実績の概要に記載したように概ね計画通りに研究は進んでいる。
当初の研究計画通りに平成26-27年度は、RAGE欠損マウス移植膵島に発現するインスリン産生細胞再生に関する解析に関し、インスリン産生細胞再生誘導に関連した転写因子の探索(message and protein levels)、野生型vs RAGE欠損マウス移植膵島のマイクロアレーによる再生因子の探索、ならびにsRAGEのヒト単離膵島への効果を検証し、再生誘導因子の同定を目指す。
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Pancreas
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Am J Transplant
巻: 13(8) ページ: 2154-60
10.1111/ajt.12306