研究課題/領域番号 |
25293282
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
増井 俊彦 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (20452352)
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研究分担者 |
上本 伸二 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (40252449)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 膵癌 / Pdx1 / 発癌 / 膵発生 |
研究概要 |
a)膵癌、PanINにおけるPDX1発現解析 現在、膵発癌モデルにPdx1ノックアウトマウスを掛け合わせた目的マウスを作成、解析のために数を増やしつつある。マウスのPanIN領域のPDX1発現を免疫染色により確認すると、これまでのヒトの既報と同様にPanIN領域で発現が認められた。PDX1染色陽性の細胞は不均一であり、またPanINの病変がすすむとともに、PanIN中のPDX1陽性細胞の比率は少なくなる傾向があるが、病変の十分進行したマウスの数がまだ少ないためさらなる解析を必要とする。PanINの悪性度が増強するとともにPDX1発現が低下することは次に述べるノックアウトマウスの発癌病態を裏付ける結果である。 b)膵発癌モデルにおけるPdx1発現の有無による発癌への関与の検討 さらに作出したマウスからtamoxifenを投与し、解析をすすめている。膵癌モデルマウスにpdx1-floxedマウス(pdx1flox/flox)を組み合わせたノックアウトマウスでは、当初の予想に反して、長期間観察すると前癌病変であるPanIN領域がコントロールと比べて広く観察されるようになり、また4か月経つと膵臓に腫瘍が形成された。つまり、PDX1がなくなることにより病変は悪化するという驚くべき結果が得られた。さらに同時におこなったlineage tracingの解析では、PDX1陽性のPanINとともに、PDX1陰性のPanINの領域が形成され、現在その意義を解析中である。強制発現モデルも作成中であるが、まずは上記現象のメカニズムの解明を進めるため、上記pdx1ノックアウトマウスの解析を優先してすすめている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
現在、目的1である膵癌モデルマウスにおけるPdx1の役割の解明、を進めているが、概要で述べたとおり、pdx1ノックアウトマウスで発癌がむしろ促進されるという当初とは異なった結果が得られつつある。しかしながら少なくとも発癌に対するPdx1の何らかの役割が想定できるため現在その解析を進めており、進行状況としては当初の計画であるPdx1の発癌における役割の解明についてはおおむね予想の範疇内である。一方、膵炎モデルなどメカニズムの解明を待っての研究の開始を遅らせているために全体としてはやや遅れ気味であると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
次年度の解析によりPdx1の役割が発癌抑制にどのように関与するのか、そのメカニズムを明らかにする。さらにpdx1強制発現モデルでの膵癌の動態を明らかにすることで膵癌治療への応用が可能かどうか検討を行う。 また、当初の予定通り、分子生物学的に解析するためにマイクロアレイを用いた発現解析、Pdx1の有無での腫瘍のプロファイリングを行う。可能であればセルレインによる急性炎症モデルを加えることで、膵再生と発癌への関連を検討する。セルレインにて炎症を加えると、3日後よりpdx1が発現してくるが、その際にpdx1が発癌を抑制するか促進するか解析することで炎症における発癌促進におけるpdx1の意義を解明する。
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次年度の研究費の使用計画 |
膵発癌モデルにおいて、pdx1の役割の解明のため必要数をそろえるためにマウスの作出を行っているが、マウスケージの限界もあり一定数以上の作出は困難であった。 一方、pdx1の役割が当初のプレリミデータからは予想外のデータとなり、そのメカニズムの解明に時間をかけているため、マウス炎症モデルへの展開はそれを待ってからの研究となる。その分H25年度の使用額が少なくなり次年度への研究費の繰越を行う必要ができた。 次年度では引き続きpdx1の発癌への役割およびそのメカニズムの解明を進めることで、強制発現モデル、Pdx1の下流遺伝子の検討、および爾後の炎症の役割への展開につなげる。従って、次年度ではマウスの作出を継続してノックアウトモデルに詳細な検討を加えるとともに強制発現モデルの検討に使用し、さらに現在解析中の発癌組織におけるpdx1の有無での腫瘍プロファイルを検討し、pdx1の新たな下流遺伝子を同定することに使用する予定である。
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