研究課題
(1)左側大腸癌(CIN型)モデルでの腫瘍の解析と薬効評価モデルの確立:平成2015年度末までには、CPC;Apcにおける造腫瘍能と腫瘍発育経過を経時的に観察することで薬効評価ができるモデルが確立できた。このモデルにNSAIDを投与して、それによる腫瘍縮小効果を確認するとともに、腫瘍の遺伝子発現プロファイルを網羅的遺伝子解析して新規大腸癌増大抑制分子の同定をした。(2)右側型大腸癌(MSI型)マウスで得られた大腸腫瘍の網羅的遺伝子およびプロテオーム解析: Apc+K-ras, Apc+TGFbetaRII, Apc+B-raf, Apc+PTEN などのマウスで発生した腫瘍における転写産物の発現プロファイルを、網羅的遺伝子発現解析用DNAチップを用いて解析中である。Apc+K-rasではKras変異によってGlut1が発現誘導されることを同定した。Apc+TGFbetaRIIモデルでも、新規大腸癌増殖因子を同定した。現在PLos Oneに投稿しMajor revisionという結果で再投稿中である。(3)新規発現誘導型Creマウス(Cre-ERT2)と新規左側大腸癌ダブルノックアウトモデルの作製:CDX2P-Cre-ERT2マウスとApcのfloxマウスを交配して作製したCDX2P-Cre-ERT2;ApcloxP/loxPマウス(Apcホモ)ではタモキシフェンの濃度、投与回数に依存性に腫瘍が発生することを検証した。(4)ヒトの病理検体での検証とサブクラス分類をめざした臨床試験の構築:CDX2P-G22-Cre;Apc;K-rasダブルノックアウトマウスから浸潤能の高い腫瘍が発生した。網羅的遺伝子解析を行い、浸潤・転移能に関与する候補遺伝子や候補蛋白質を約10種類程度まで絞り込んで報告した。
2: おおむね順調に進展している
(1)左側大腸癌(CIN型)モデルでの腫瘍の解析と薬効評価モデルの確立では、現在、論文を再投稿中である。シンバイオティクスによる腸内細菌の制御と発がんに関する論文も現在、投稿準備中である。(2)右側型大腸癌(MSI型)マウスで得られた大腸腫瘍の網羅的遺伝子およびプロテオーム解析、についてもJournal of Gastroenterologyに論文が受理され、その成果が表紙に紹介された。(3)新規発現誘導型Creマウス(Cre-ERT2)と新規左側大腸癌ダブルノックアウトモデルの作製、についても懸案であったCre-ERT2マウスの条件設定が終了し、発がん実験を行っている。(4)ヒトの病理検体での検証とサブクラス分類をめざした臨床試験の構築、についても既にヒトの検体の収集は進んでおり、2016年度には複数のdriver geneの標的遺伝子の解析が可能となる予定である。
これまでの3年間で、概ね目標を達成しつつある。(1)左側大腸癌(CIN型)モデルでの腫瘍の解析と薬効評価モデルの確立、については、引き続き、論文再投稿中である。現在、他の分子標的薬についての検討を計画中である。腸内細菌による腫瘍発生の変化およびシンバイオティクスなど、腸内細菌と栄養素の投与の効果について結果がまとまり、現在、投稿準備中である。今後さらなる研究成果が出てくることが予想される。(2)右側型大腸癌(MSI型)マウスで得られた大腸腫瘍の網羅的遺伝子およびプロテオーム解析、についてはK-rasの変異を加えたマウスモデルであるApc+Krasの腫瘍とApc変異単独モデルの腫瘍の間で、遺伝子発現プロファイルを比較した結果、Glut1が発現上昇していることが同定され、Journal of Gastroenterologyに受理された。2016年6月号の表紙に掲載された。(3)新規発現誘導型Creマウス(Cre-ERT2)と新規左側大腸癌ダブルノックアウトモデルの作製、については、これまでにタモキシフェンの濃度設定が終了し、現在、他のCPCマウスやCDX2P-G22Creマウスでは作製が困難であった遺伝子改変マウスの作製をおこなっている。(4)ヒトの病理検体での検証とサブクラス分類をめざした臨床試験の構築、については、今後、ヒトの腫瘍をつかった予後との相関についての解析が進む。
一つの試薬(抗体)の注文が遅れたてしまい、年度内に受け取ることができなかった。
すでに翌年度に発注し、使用している。
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J Gastroenterol
巻: 51 ページ: 447-457
10.1007/s00535-015-1121-9
PLoS One
巻: 2015 ページ: e0132435
10.1371/journal.pone.0132435. eCollection 2015