研究課題
基盤研究(B)
これまでのマウスを用いた研究で、(1)腫瘍細胞は腹腔内投与直後にクラスターを形成すること、(2)クラスターを形成したがん細胞が、CXCR4を強力に発現するようになること、(3)CXCR4を発現するがんクラスターが、CAR細胞nicheに遊走・集積すること、(4)このプロセスはaphidicolinによる細胞増殖抑制により影響されないことから、「腫瘍細胞が非増殖性に細胞クラスターを形成すると、クラスター全体の形質が変化する」ことが示唆される。一方、この腫瘍細胞の集積とクラスター化は、CXCR4 antagonistであるAMD3100ならびに抗CXCR4抗体により顕著に抑制されることから、CXCR4のリガンドでありCAR細胞が発現するCXCL12のchemoattractant効果であることが示唆される。以上の成績は「腹膜播種がん細胞がまず速やかにクラスターを作り、CAR細胞により構成されるreticular nicheへ引き寄せられ、それを足場として播種巣を形成する」という重要な知見である。以上をもとに、初年度は、これまでの研究成果を基に、「胸腹膜CAR細胞nicheにおいて、がん細胞が「幹細胞化」する分子・細胞基盤の解明」に集中した。(1)腹膜内でがんクラスターが形成されやすい理由:腹腔内および腹腔洗浄液中では、培養液中よりがん細胞のクラスター化するスピードは著しく亢進していること(3時間)を明らかにしている。これは腹腔内に存在する物質により細胞間接着が亢進していることを示唆することから、その物質を同定した。その結果、Collagen type IVが必須因子であり、かつplasma fibronectinが促進因子であることを突き止めた。(2)集積したがん細胞が1日という短期間で小結節に成長する過程とCXCR4を発現する機序:クラスター形成により、がん細胞はCXCR4を強く発現するが、そのメカニズムとして転写因子Sp1が必須であることを突き止めた。
1: 当初の計画以上に進展している
上記の成果に加え、さらにヒト採取標本においても同様の現象が観察されることを突き止めた。
2年目は当初の予定通り、特に腹膜播種形成時にがん幹細胞様形質を示す分子メカニズムについて、さらなる検討を加えて行く。
本年度使用する予定であった細胞材料での作業を翌年度に行うことになったため、充当分を繰り越しすることとする。昨年度購入予定であった細胞材料を繰越額全額分購入予定。
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Cancer Immunology, Immunotherapy
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