研究課題
マウスを用いた研究で、(1)腫瘍細胞は腹腔内接種直後にクラスターを形成すること、(2)クラスターを形成した腫瘍細胞がCXCR4を強力に発現するようになること、(3)CXCR4強発現クラスターがCAR細胞様細胞nicheに遊走・集積すること、(4)以上のプロセスはAphidicolinによる細胞増殖抑制の影響を受けないことから、『腫瘍細胞が非増殖性に細胞クラスターを形成すると、クラスター全体の形質が変化する』ことが示唆され、そのキネティクス解析を進めてきた。本研究初年度は、Type IV collagen、plasma fibronectinがクラスター形成促進因子となり、転写因子Sp1によりCXCR4の発現が更新していることを突き止めた。その知見を基に、2年度目はヒト臨床検体での本現象の確認と、上記メカニズムに基づくin vivoでの治療効果検討を中心に研究を進めた。ヒトでもマウスと同様に腸間膜上にCAR細胞様細胞nicheが存在していることを突き止め、そこにヒト腫瘍クラスターが転移を起こすことを明らかにした。また、単剤では治療効果を示さない、またin vitroで腫瘍細胞クラスター形成時には効果を示さない抗がん剤について、腹腔内でのクラスター形成を阻害することでその治療効果が飛躍的に向上することを確認した。最終年度である3年目は、これまでの成果を集約し、腹膜播種形成メカニズムの全容解明に関する論文として、Cancer Research紙に発表した(Kasagi Y, et al. Cancer Res. 2016.)。加えて、ここで明らかにしたメカニズムに基づく新規抗がん剤スクリーニングシステムを開発し、実用化に繋げるべく基礎評価を進めた(東大創薬機構の化合物ライブラリーを使用)。その結果、既存薬の中から腹膜播種に著効する化合物を発見し、これまでにみられなかったような抗腫瘍効果を確認した。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2016
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Cancer Research.
巻: 76 ページ: 347-357