研究実績の概要 |
1.葉酸リセプター抗体:我々はFRαとFRβに同様な高親和性を示すラット抗ヒトFRαβ抗体を作成した。本抗体はFRα発現腫瘍株やFRβ発現マクロファージに対して、補体依存性細胞傷害能(CDC), 抗体依存性細胞傷害能(ADCC)やFRα発現がん細胞株に抗体依存性細胞貪食能(ADCP)を示した。抗FRαβ抗体はがん組織のFRα発現がん細胞とFRβ発現がん関連マクロファージを傷害できる可能性がある。さらに、この抗体遺伝子のフレームワークと類似したヒトIgG1遺伝子をDNAバンクから選び、CDR遺伝子を導入(CDRグラフト)するとともにCDRのT細胞エピトープを除くため点変異を導入したVH,VLそれぞれ3種のDNAクローンを得た。これらの9例の組み合わせの内2例においてヒトFR,FRに反応がみられた。また、体液、血液における可溶性FRβ測定系を確立し、膵臓がん20例の臨床データと可溶性FRβ値の相関を検討した。血清可溶性FRβ高値群はリンパ節転移症例との高い関連性が示唆された。 2. CD133発現膵癌細胞におけるmiRNA発現の解析:CD133発現膵癌細胞ではmiRNAマイクロアレイ法でmiR-30ファミリーの発現が高いことが分かった。次いで、CD133がmiR-30ファミリーの発現を制御していることと、miR-30a, 30b, 30cがCD133発現膵癌細胞の遊走浸潤、化学療法耐性を増強させることを見出した。miR-30ファミリーの発現はCD133によって調節されており、CD133発現膵癌細胞において遊走浸潤能を促進することが示された。私たちの知る限り、この研究は膵癌におけるmiR-30ファミリーの効果と幹細胞マーカー候補のCD133によるその制御を調べた最初の研究である。これらの結果はmiR-30ファミリーに対する標的治療がCD133発現膵癌幹細胞に対する新しい治療の開発に寄与することを示唆している。
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