研究実績の概要 |
細胞移植時の造腫瘍性評価は、細胞製剤の作成にとっては安全性の確保に重要な課題となる。そこで、ルテラン/B-CAM分子はラミノン5の特異的受容体となっているが、造腫瘍効果に関して検討した。肝細胞癌からはこの分子が放出されており、ルテラン/B-CAM分子が腫瘍の増殖促進に働いていることを証明した(Kikkawa Y, Mizuguchi T, et al. Exp Cell Res. 2014;328:197-206.)。ヒト肝細胞の分離は、ドナー細胞採取に係る手技や安全性の確立が急務であった。外側区域切除による安全性と効率性を重視したドナー採取法として外科手技の報告を行った(Mizuguchi T, et al. J Liver 2:141.)。また、虚血再灌流障害の術中モニタリングは難しく、乳酸によって肝細胞の生存率への影響と切除後のドナーに生じる合併症との影響に関して報告した。(Meguro M, Mizuguchi T, et al. J Hepatobiliary Pancreat Sci. 2014;21:489-498.)。この合併症に関する一定の基準が曖昧であり、国際的な統一基準が存在せず、学術的評価が困難であった。そこで、合併症の分類と程度に関して一定の標準的な基準を作成した(Ishii M, Mizuguchi T, et al. World J Hepatol. 2014;6:745-751.)。また、ドナー採取における切除領域に関しても解剖学的領域を意識した切離方法と意識しない方法とでは、細胞の増殖能に影響が出るほか、切除適応になった病態の長期予後も影響を与えうる可能性を指摘した(Ishii S, Mizuguchi T, et al. World J Gastroenterol. 2014;20:3335-3342.)。次に、安全な細胞採取のために肝臓の背面で下大静脈前面に生理食塩水を注入して行う方法を考案し、手技のビデオも併せて報告した(Mizuguchi T, et al. J Am Col Surg 2014;219:e11-4.)。また、細胞の栄養バランスとしてBCAAの重要性に関して臨床的意義を報告してきたが、これまでの報告をまとめて、著書として出版した。
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