研究課題
我々は今までに消化器癌血管新生における炎症性サイトカインの役割について報告してきた.膵癌をはじめ消化器癌では,腫瘍由来のIL-8やVEGFといった血管新生因子が,癌間質相互作用により腫瘍の増殖を亢進しており,これらの制御が抗腫瘍効果をもつことを確認してきた.しかしながら個々のサイトカインの制御による抗腫瘍効果は臨床応用に至っていない.Protein Kinase D (PKD)はGPCRシグナルの下流に位置するキナーゼで,サイトカイン産生や細胞増殖に関与すると報告されている.膵癌ではPKDシグナルによる腫瘍の増殖作用が報告されているが,そのメカニズムは十分に解明されていない.本研究では,膵癌をはじめ消化器癌血管新生におけるPKDシグナルの分子生物学的役割を解明し,その制御を臨床応用することを目的とした.膵癌では今までにPKDの抑制により増殖,浸潤,血管新生が抑制することを確認して報告してきた.本年度は胃癌細胞株MKN45を用い、PKD阻害剤としてCID755673を使用した。PKDを賦活化するため、phorbol myristate acetate (PMA)を使用した。血管新生因子としてVEGF およびIL-8に注目した。VEGFおよびIL-8のmRNAおよびタンパク発現はPMAで増加し,それはCID755673で抑制された.PKDリン酸化はPMA濃度依存的・時間依存的に増強し、CID755673処理によりリン酸化増強は抑制された。同様に膵癌でもPKDはVEGFおよびIL-8の分泌を制御していた.以上より,消化器癌においてPKDはこれら血管新生因子の発現の一部に関与しており,低分子阻害薬などによるPKDの制御は新たな消化器癌の抗腫瘍相可をもつ可能性が示唆された.今後はin vivoでの成果を検討する予定である.
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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