研究課題/領域番号 |
25293294
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研究機関 | 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所) |
研究代表者 |
西村 隆 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), 東京都健康長寿医療センター研究所, 研究員 (80433655)
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研究分担者 |
巽 英介 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 研究所, 部長 (00216996)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 補助人工心臓 / 心拍同期制御 / 広範囲心筋梗塞 |
研究実績の概要 |
広範囲心筋梗塞症例に対する連続流VAD治療の治療成績は十分ではないため、治療効率を上げるべく、自己心拍に同期させてVAD回転数を変化させるシステム(NHLCS)を開発してきた。本邦で臨床使用されている連続流VADであるEVAHEARTのコントローラーを改造して心電図のR波を検出してこれに周期的な回転数変動を同期させる機構を作成した。回転数応答をbench testで確認したうえで、生理学的影響を動物実験で明らかにしてきた。これまでに左心室負荷の調節、全身血流の拍動性の向上、冠血流の増加、酸素代謝効率の向上等を示してきた。また、広範囲心筋梗塞症例に対するNHLCSの効果として梗塞範囲の縮小を実証するに当たり、広範囲心筋梗塞に伴う僧帽弁逆流、右心不全・肺高血圧症の合併時の対応についてより効果的な制御法を確立した。また、NHLCSの駆動に伴う、凝固系の変化についても検討し、特に大きな変動を与えないことを明らかにした。 これらの結果をもとに、広範囲心筋梗塞を冠動脈前下行枝結紮による急性動物実験モデルで作成し、虚血心における急性補助効果の増加を実証した。さらに冠血流増加効果および左心室負荷の減少の伴う心筋酸素消費量の低下のみならず、心筋内の血流分布も改善し、心内膜下虚血を予防できる可能性を示した。 これらの結果を慢性動物実験で実証するべく、NHLCSを搭載したEVAHEARTを大型実験動物に装着し、術後安定期において覚醒下に駆動を行い、安全性を確認する検討を開始している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
当初の計画では、本年度が研究最終年度の予定であった。1年以内の遅れで、当初予定の広範囲心筋梗塞モデルに対するNHLCS使用の慢性動物実験を開始することはできた。しかし、予期せぬ不整脈による突然死が多発し、十分な結果が出せなかった。しかし、その原因が脱血管の心室内刺激によるものと判明し、抗不整脈に加えて、制御のタイミングを変更することによって解消した。
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今後の研究の推進方策 |
3週間の連続制御駆動を行うことを目標として、実験を遂行してきた。残念ながら5頭の実験動物において術後1週間以内に致死性不整脈によって不成功となってしまった。制御なしの予備実験では不整脈発作は一例もなく、予見できなかったが、制御による流入カニューレ接触によるものと判明し、抗不整脈薬の追加と制御タイミングの変更によって、やっと解決できた。最後に行った1例では23日間の実験予定期間を問題なく遂行でき、今後は成果を期待できると思われる。今後、予定の慢性実験を5頭に対して施行することによって、本システムの実現性を実証する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究は、広範囲心筋梗塞に対して自己心拍同期制御を行った連続流VADを用いて、冠動脈血流を増加させ梗塞範囲の縮小を図る新しい治療法の確立を目指したものである。当初、弁逆流の出現等の予期せぬ副反応の出現によって、若干の研究予定の遅延を来していた。しかし、平成29年度当初には、予定通り慢性動物実験にて実臨床に近い形での実証実験を行える目途が立っていた。 研究最終年度の本年度は、3週間の連続制御駆動を行うことを目標として、実験を遂行してきた。残念ながら5頭の実験動物において術後1週間以内に致死性不整脈によって不成功となってしまった。制御なしの予備実験では不整脈発作は一例もなく、予見できなかったが、制御による流入カニューレ接触によるものと判明し、抗不整脈薬の追加と制御タイミングの変更によって、やっと解決できた。最後に行った1例では23日間の実験予定期間を問題なく遂行でき、今後は成果を期待できると思われる。
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