研究実績の概要 |
1.心筋症患者iPS細胞の樹立については、心筋症患者の術中の皮膚生検により皮膚線維芽細胞を得る計画とした。その際に心筋組織を同時に採取し、その特性を調べて典型的な病態パターンを認識する計画とし、「心臓血管手術施行患者からの切除標本を用いた心血管系細胞および組織の特性解析研究」の研究計画書を作成した。京都大学医学部附属病院「医の倫理委員会」の承認を得て、1例の標本採取を行った。 2.iPS細胞由来心筋組織シート作成については、単層高密度培養法をもとにした我々の心筋細胞効率的分化誘導法(Uosaki, PLoS One 2011)を応用した手法により誘導された心筋構成細胞群を温度感受性培養皿上に播種し、自己拍動性心臓組織シートを得ており、(Masumoto, Sci Rep 2014)、シートの作成法をより発展させ、組成の均一化した薬剤スクリーニングに適する心筋組織シートの作成を行った。具体的には、心臓組織構成細胞である、心筋細胞・内皮細胞・壁細胞を個別に分化誘導し、それらを混合したシートを作成した。特に心筋細胞と壁細胞において、その混合比率を厳密にコントロールしたシートを作成し、シートの性状・電気的特徴などを検討した。 3.化合物スクリーニング法については、多電極細胞外電位測定システム上に心臓組織シートを乗せ、細胞外電位測定を測定し、その波形の特徴を解析した。シート全体で同期した自発拍動の記録だけではなく、その薬物応答性評価の一つとして、創薬を考慮する際に重要な心毒性評価に着目し、検討を行った。臨床にて薬剤性QT延長作用を引き起こすE4031を用いた薬剤負荷試験を行い、細胞外電位波形にてQT(FPD)延長作用を再現できることを確認した。またこの薬剤負荷により、QT(FPD)延長のみでなく、特徴的な不整脈現象を観察することができ、臨床的に重要な不整脈のin vitro病態再現モデルとして、病態解明および創薬研究において有用な結果を得ることができた。
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