研究課題/領域番号 |
25293304
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
齊藤 延人 東京大学, 医学部附属病院, 教授 (60262002)
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研究分担者 |
今井 英明 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (70359587)
武笠 晃丈 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (90463869)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 脳卒中 / 脳卒中関連遺伝子 / 頭蓋内主幹動脈狭窄 / もやもや病 / RNF213 / 脳卒中リスクアレル |
研究概要 |
本研究においては、我々が最近脳卒中の関連遺伝子として報告したRNF213(Stroke 2012)を多角的に解析することを目的としている。初年度である平成25年度においては、脳卒中患者の大規模な疫学調査およびRNF213の遺伝子変異の関連解析を行うことによりRNF213の虚血性脳卒中(脳梗塞)の主たる原因である頭蓋内主幹動脈狭窄(以下頭蓋内狭窄)に関わる寄与度を明らかにすることを目標とした。様々な脳血管疾患の患者519例(もやもや病64例、片側もやもや病14例、頭蓋内狭窄125例、頚動脈狭窄55例、脳動脈瘤105例、脳内出血21例、normal control 135例)において遺伝子変異RNF213 c.14576G>Aの有無を検証した。特発性疾患であるもやもや病で82.8%(53/64)、片側もやもや病で57.1%(8/14)に変異を認めた。さらには一般の動脈硬化性の頭蓋内狭窄の23.2%(29/125)で同変異を認め、その他では頚動脈狭窄に1例、脳動脈瘤に1例、controlに2例認めるのみであった。従来の報告通りc.14576G>Aは特発性疾患のもやもや病に有意な関連を認めた。そればかりでなく一般の動脈硬化性の頭蓋内狭窄に対しても有意な関連を示した。以上の結果よりRNF213 c.14576G>Aは様々な表現型の頭蓋内狭窄に有意な関連が示された。日本人の2%程度がこの変異を保有していると報告されており、この変異は頭蓋内狭窄のリスクアレルとして重要なものであると考えられる。RNF213の変異を評価することは適切な脳卒中のリスク評価につながり、リスクを有する者に対して血圧管理等の予防医療につなげることができると考える。以上の結果よりRNF213変異の重要性を示す結果を得られ、英文学術誌Stroke誌に発表した(Stroke 2013)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画していた大規模な疫学調査および関連解析にて、RNF213変異(c.14576G>A)の脳卒中における重要性が示され英文学術雑誌に発表することができた。この結果は学会等の発表において注目を集めており、更なる研究の発展が期待される。
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今後の研究の推進方策 |
現在進行中の研究に関してだが、文部科学省科学研究費新学術領域研究「ゲノム支援」の支援を受け、頭蓋内主幹動脈狭窄患者においてRNF213全体のresequenceを行ないRNF213上でc.14576G>A以外の頭蓋内主幹動脈狭窄に関わる遺伝子変異の同定を目指している。またRNF213の機能解析や、脳卒中発症に関わるRNF213 c.14576G>A以外の要因の同定を目指して解析を進めている。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度の疫学調査における遺伝子解析はRNF213の特定の遺伝子変異に限定した解析をおこなったため残金が発生することとなった。また症例数に関しても目標とする症例数に達しなかったため、その分の解析費用が残金として発生した。 疫学調査および遺伝子解析に関してはさらに症例数を増やし解析を進める予定で、本年度の残金はそれに当てる予定である。また、遺伝子解析に関しては発症に修飾する遺伝子変異を同定するために全ゲノム領域の変異解析を進める予定であり、本年度の残金をそれに当てる予定である。
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