研究課題/領域番号 |
25293304
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
齊藤 延人 東京大学, 医学部附属病院, 教授 (60262002)
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研究分担者 |
今井 英明 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (70359587)
武笠 晃丈 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (90463869)
宮脇 哲 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (70407914)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 脳卒中 / 脳卒中関連遺伝子 / 頭蓋内主幹動脈狭窄 / もやもや病 / 類もやもや病 / RNF213 / 脳卒中リスクアレル |
研究実績の概要 |
先行研究においてRNF213が脳卒中関連遺伝子して重要であることを明らかにした。一方で、頭蓋内狭窄を有する患者の中には変異c.14576G>Aを持たない者も存在する。これらの患者の中にはc.14576G>A以外のRNF213の変異を持つ者が存在する可能性がある。そこで、これまでRNF213の遺伝子変異c.14576G>Aのみに着目し解析を行ってきたが、疾患発症に関連するRNF213上のその他の変異の同定を目指した。頭蓋内狭窄患者271人と健常者141人においてRNF213全体のresequenceを行い、c.14576G>A以外の疾患に関連する変異同定を目指した。RNF213はexon数が68と大きな遺伝子であり、次世代シークエンサーを用いたtarget resequenceを施行して頂いた。 解析の結果RNF213上に185の変異(多型)が同定された。その内訳としては、82がNoncoding領域で、103が Coding 領域に存在した。Coding領域の変異(多型)の内訳はSynonymous 42、Missenseが61、Nonsense 0、Frameshift 0であった。 Coding領域の変異(多型)のうち、疾患発症に関わるものはMissenseのものと考え、61のMissenseの変異(多型)においてCase-control studyを行い、caseに有意な関連がある変異(多型)の同定を目指した。結果としてはこれまで着目してきたc.14576G>A (rs112735431)が最も疾患に強い関連を持つ変異であることが明らかとなった。また疾患群でのみ認められるrare variantが8種類同定され、c.14576G>A (rs112735431)以外で疾患と関連する遺伝子変異の候補であると考えられた。 以上の結果より、これまで着目してきた遺伝子変異 RNF213 c.14576G>Aの重要性が再確認される結果となった。またRNF213 c.14576G>Aをもたない発症者にこれまで報告のない新規の変異を数種類認められ、疾患に関わる遺伝子変異の候補と考えられる。これらの候補となる変異に関しては別コホートでのvalidationや変異の生物学的意義の検証が必要であると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
これまでの研究成果から、脳卒中に関連する重要な遺伝子変異としてc.14576G>Aの意義を明らかにする結果を得ており、c.14576G>Aに加えて脳卒中の発症や重症度を修飾する因子の探索を行っている。想定よりも多いサンプルが収集され、遺伝子解析・評価がやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
我々はRNF213 c.14576G>Aが脳卒中の主たる原因である頭蓋内狭窄に大きな関連を持つことを明らかにした。RNF213変異(c.14576G>A)は日本人の一般集団の2%と比較的高頻度に認められるが明らかとなっており、一方で頭蓋内狭窄の有病率は約1000人に1人程度(全体の0.1%程度)あり、RNF213 c.14576G>Aの保因者(全体の2%程度)がすべて発症するわけではない。つまりRNF213 c.14576G>Aを持っていても、頭蓋内狭窄の発症の有無、重症度に関わるさら別の遺伝子変異が存在する可能性が高いと考えられる。今後このような疾患発症の決定因子となる新たな遺伝的変異(遺伝子多型)を明らかにすること課題としている。
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次年度使用額が生じた理由 |
これまでの研究成果から、脳卒中に関連する重要な遺伝子変異としてc.14576G>Aの意義を明らかにする結果を得ており、c.14576G>Aに加えて脳卒中の発症や重症度を修飾する因子の探索を行っている。Target resequenceによって候補となる遺伝的因子を同定し、validationのために別コホートのサンプル収集を行った。
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次年度使用額の使用計画 |
脳卒中の発症や重症度を修飾する因子を別コホートにて解析を行い、validationを行ない、絞り込みを行っていく予定である。
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