研究課題/領域番号 |
25293309
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
甲村 英二 神戸大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (30225388)
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研究分担者 |
篠山 隆司 神戸大学, 医学部附属病院, 講師 (10379399)
西原 賢在 神戸大学, 医学(系)研究科(研究院), 研究員 (20452493)
佐々木 良平 神戸大学, 医学部附属病院, 教授 (30346267)
田中 一寛 神戸大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (70467661)
水川 克 神戸大学, 医学部附属病院, 助教 (80403260)
細田 弘吉 神戸大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (90403261)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | glioma / MR spectroscopy / IDH / 2-hydroxyglutarate |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、グリオーマの代謝が、IDH(Isocitrate dehydeogenase)変異やmTOR等の活性化等により他の脳腫瘍と異なるため、組織や血液、髄液で包括的網羅的なメタボローム解析を行い、術前にグリオーマの組織型、悪性度、遺伝子変異の有無等を反映する代謝産物のバイオマーカーを構築することである。2-ヒドロキシグルタル酸(2HG)はIDH変異によって特異的に産生され、癌代謝産物として注目されているため、我々は術前にプロトンMR spectroscopy (MRS)、術後に質量分析装置を用いて2HGを含む種々の脳内代謝産物の比較・検討を行い、IDH変異のあるグリオーマの術前予測について検討した。方法は、術前MRSでは腫瘍病変にVolume of interest(VOI)を設定し、Philips社製、3Tesla MRI (Achieva, Netherlands)を使用してMRSによる腫瘍内代謝産物の測定を行い、解析ソフトとしてLC-model (S.W Provencher, Canada)を用い各代謝物の定量解析を行った。また術中ナビゲーションシステムでVOIと同部位の腫瘍標本を摘出し質量分析計(GC-MS; GCMS-QP2010 Ultra)を用いて2HGの発現量を測定した。変異型IDH1の診断は免疫組織染色とDNAシークエンスによって確定した。結果は、38例の神経膠腫患者を解析し、変異型IDH1は38例中14例 (37%)に認めた。38例中20例でMRSとGC/MSによる2HGの測定が可能であったが、術前MRSを用いた2HG測定には検出可能限界量があり、IDH1変異有無の予測は感度57%、特異度92%(AUC 0.76)であった。IDH1変異陽性例ではα-Ketoglutarate(αKG)を含むTCA回路の代謝物には変化を認めなかったが、グルタミン酸、グルタミンが有意に低値であり、診断に有用と思われた。2HG測定にグルタミン酸の値を加えたIDH1変異有無の予測は、高い感度(72%)と特異度(100%)が得られ、術前診断に有用と思われた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
症例は38例とやや少ないものの、MRSとGC/MSによるメタボローム解析での比較により、MRSの代謝物の測定値を、GC/MSを用いた実際の組織中の代謝物の測定値で確認できた。また、これまでの報告で2HGの上昇が報告されているが、それも本研究で確認でき、また、新たにグルタミンやグルタミン酸の濃度も加味することで診断予測が向上証明できたため。
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今後の研究の推進方策 |
さらに症例を増やして、MRSとGC/MSとのメタボロームの比較検討を行う予定である。また、培養細胞にIDH変異遺伝子を導入して、代謝物の変化をGC/MSを用いて詳細に調べ、MRSでのメタボローム解析と比較する。また、組織型(星細胞腫や乏突起膠腫)などの分類に有用な代謝物のバイオマーカーについても解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
消耗品の納入が遅くなったために生じました。
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次年度使用額の使用計画 |
使用計画に変更はありません。
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