研究課題/領域番号 |
25293310
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
堀内 正嗣 愛媛大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (40150338)
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研究分担者 |
茂木 正樹 愛媛大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (20363236)
岩波 純 愛媛大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (90624792)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | アンジオテンシン / クロストーク / 受容体機能調節タンパク / 認知症 / 脳卒中 |
研究実績の概要 |
両側総頸動脈に極小コイルを留置する両総頸動脈狭窄術(BCAS; Bilateral Carotid Artery Stenosis)にて慢性血管性認知症モデルを作成、モリス水迷路試験で空間認知機能を調べたところ、AT2受容体欠損マウスでは野生型マウスに比べ、認知機能低下が著しいこと、AT2受容体刺激薬(compound 21; C21)投与により野生型マウスでは炎症反応抑制、脳血流増加とともにBCAS後の空間認知能力の向上を認めた(J Am Soc Hypertens. 2015, in press)。加えて我々はATIP過剰発現マウスでは、BCAS後の認知機能に変化がみられる事、アンジオテンシン変換酵素2(ACE2)欠損マウスでは、認知機能が低下している事等を観察している事(論文投稿準備中)を観察している。このBCASモデルでは海馬病変が誘導され、血管性認知症とアルツハイマー病(AD)等のリンク解明にも有用である。マウス大腿動脈にポリエチレンチューブを留置することにより作成した、炎症性血管リモデリングモデルにC21による直接的AT2受容体刺激はPPARγ活性化を一部介して血管リモデリングを改善する可能性が示唆され、培養血管平滑筋細胞でそのメカニズムを検討したところ、AT2受容体機能調節物質である、ATIP(AT2 Receptor Interacting Protein)が転写調節因子として作用していることが観察された (論文投稿中)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記したように、レニン・アンジオテンシン系のProtective Armが認知機能向上に作用するという基本的な結果が得られており、ATIPの新しい作用として、血管平滑筋細胞でPPARγ活性化に転写調節因子として作用している新規結果がえられており、現在、脳梗塞モデル、BCASモデル、神経細胞、アストロサイトで確認中であり、おおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
現在までに得られた結果をもとに動物実験だけでなく培養細胞を使用した研究を推進していく予定である。具体的には以下の実験を推進していく。 動物実験; ACE2欠損マウス、Mas受容体欠損マウス、AT2受容体欠損マウス、ATIP過剰発現マウスにBCASを施工し、モリス水迷路試験等にて認知機能を観察し、C21, Mas受容体刺激薬等の投与実験も行う。AT2受容体欠損マウス、Mas受容体欠損マウスを掛け合わせ、ダブルノックアウトマウスを作成したのでこの遺伝子改変マウスも使用する。さらにATIPに対するデコイ核酸投与等の影響も検討する。ADモデルとしてアミロイド前駆体タンパク過剰発現マウスも使用する予定である。将来の実験のために血管平滑筋、神経細胞特異的なATIP遺伝子改変モデルの作成にも着手する予定である。 細胞を用いた実験;上記マウス海馬より調整した神経細胞を主として用い、C21, Mas受容体刺激薬等による神経細胞分化作用、保護作用の解析をさらに詳細に進める。ATIPがAT2受容体刺激時に転写調節因子としてPPAR刺激に関与している可能性を血管リモデリング、血管平滑筋細胞にて観察しているので、神経細胞、アストロサイトでもこのATIPの作用を検討する。さらに、ATIPがAT2受容体刺激とは独立して、神経分化、保護作用に関与している可能性をも検討する。ATIPの活性化機構にも本年度より焦点をあてていく予定である。即ち、ATIPの発現調節機構、ATIPの機能が特異的なリガンド、リン酸化、脱リン酸化などにより調節されている可能性、ATIPに結合するシグナル伝達物質、転写調節因子のスクリーニングも進行させていく。Mas受容体とAT2受容体のダイマー化の可能性も検討する。
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