研究課題/領域番号 |
25293312
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
荒木 令江 熊本大学, 大学院生命科学研究部, 准教授 (80253722)
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研究分担者 |
倉津 純一 熊本大学, 大学院生命科学研究部, 教授 (20145296)
中村 英夫 熊本大学, 医学部附属病院, 講師 (30359963)
小林 大樹 熊本大学, 大学院生命科学研究部, 産学関連系研究員 (20448517)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 脳神経系腫瘍 / プロテオミクス / NF1 / NF2 |
研究概要 |
神経線維腫症(neurofibromatosis:NF)は、全身の皮膚に多発性結節を伴う1型(NF1)、及び類似した症状に加え中枢神経系腫瘍を高頻度に伴う2型(NF2)からなる遺伝性疾患である。本研究では、NF1及びNF2の病態発症メカニズム解明と治療ターゲットの開発を目的として、それぞれの原因遺伝子産物;NF1蛋白(Neurofibromin),及びNF2蛋白(Merlin)の細胞内機能欠損によって異常化する特異的なシグナル分子群を、我々の開発によるプロテオーム・トランスクリプトーム統合解析システム(病態プロテオミクスコアシステム)にて詳細に明らかにする。本年度は独自に構築したNF病態モデルを用いて、特異的な病態に関わる細胞内分子ネットワークをmRNAと蛋白質両レベルで同定し、これらをユニークな分子情報統合データマイニング法にて融合して抽出することにより絞り込みを行った。融合プロテオミクスにより3198分子群を定量的に同定し、NF1発現抑制細胞で有意に経時的発現変動した97分子のクラスター解析、および活性化分子ネットワークを検索した結果、Dynein IC2、GR、COX-1の一連の特異的活性化シグナルネットワークがシミュレーション的に検出された。これらのsiRNAや阻害剤処理による検証実験の結果、NF発現抑制細胞では、Dynein IC2-のスプライシングとリン酸化の亢進によってGRの核輸送が誘導され、その結果COX-1の発現を亢進させた。興味深いことに、NF1欠損PC12細胞において、このCOX-1の過剰発現を抑制したところ、神経突起伸長阻害が回復して分化異常が正常化することが判明した。現在、これらの意義を考察して、NF治療薬としてのCOX-1阻害剤の検討を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画にしたがって、NF病態モデルの確立, NF1欠失細胞の特異的発現分子群および神経分化制御分子群の探索・同定は順調に進行している。
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今後の研究の推進方策 |
1. データ統合とData Base構築, 特異的シグナル分子群の選択とネットワークの抽出: 全てのデータをiPEACHソフトウェアによって統合しData Base化する。発現変動候補分子群を分子ネットワーク解析ソフトKeyMonet (医薬分子設計研究所:文献上報告されている分子ネットワーク情報を網羅的に収集した生命情報統合プラットホーム)によりNF欠失に関与する分子群ネットワークを抽出同定する. 2. 同定分子群の細胞内機能解析: 抽出された分子群の検証:様々なNF病態サンプルでの共通の発現変動分子群として抽出された分子群を、抗体カクテルと2D-Western Blot法にて確認, 神経系腫瘍細胞マーカーとしての可能性の検討, および免疫組織学的な解析との比較, 情報のデータベース化を行う. 神経系細胞の分化/腫瘍化に重要と思われる候補分子のノックダウン, 抗がん剤による細胞増殖/毒性を評価・タイムラプス共焦点顕微鏡による形態変化の観察, また, 細胞内で候補分子の発現抑制あるいは亢進に伴って同時に変化する関連分子群の発現を解析する. さらに, 候補分子の阻害剤を用いて, 病態変化への影響をin vitroで検討する.
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次年度の研究費の使用計画 |
当該年度内に使用する予定の質量分析用試薬類とDNAチップキット類、動物、抗体、培地用試薬、血清類に関して、本研究計画の最適化試行の結果、来年度に繰り越して使用する方が効率が良いことが判明したため。又、本年の研究打ち合わせをテレビ会議にしたため、旅費が来年に繰り越された。 消耗品類の予算は、来年度の同様の予算に加えることによって、予定の実験(計画書に記載)が、より効率良く、且つ、より多くのサンプルを最適化した方法論で遂行できる予定。旅費に関しては、学会出張が増えたことによって、必然的に、前年度の分を執行する予定。
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