研究課題
NF1及びNF2の病態発症メカニズム解明と治療ターゲットの開発を目的として、それぞれの原因遺伝子産物の細胞内機能欠損によって異常化する特異的なシグナル分子群を、プロテオーム・トランスクリプトーム統合解析システムにて詳細に解析した。独自に構築したNF病態モデルを用いて、特異的な病態に関わる細胞内分子ネットワークをmRNAと蛋白質両レベルで同定しiPEACHにて融合したデータベースから、NF発現抑制によって恒常的に変動する分子群で、特に、NF1機能欠損によって発現変動を示す112種の蛋白質に注目した。これらの形成する腫瘍関連ネットワークのなかで、mTOR経路調節因子であるTCTP(Translationally controlled tumour protein)の関わる新規ネットワークを検出した。NF1腫瘍起源細胞である培養シュワン細胞内のNF1発現を抑制したところ、有意にTCTPの発現が亢進し、特に成長因子の刺激は、MAPKやPI3K-AKTシグナルを介して顕著にTCTPの発現を亢進した。NF1腫瘍患者組織におけるTCTPの発現は、NF1腫瘍の悪性度に相関し、特に悪性末梢神経鞘腫(MPNST)において顕著であった。また、MPNST細胞内において、TCTPの発現はmTORの活性化によって翻訳レベルで制御されることが判明した。又、TCTP活性化機構の詳細な解析により、TCTPを中心とした新規のNF腫瘍特異的翻訳制御機構がある事が判明した。この活性化機構はTCTPをターゲットとするマラリア治療薬アーテスネートによって阻害されることが判明した。NF腫瘍においてTCTPは細胞内蛋白質の翻訳を過剰に活性化させて腫瘍の伸展に関わっており、これを特異的に阻害することによって、NF腫瘍の治療が可能となる可能性が示唆された。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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