研究課題/領域番号 |
25293313
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
戸田 正博 慶應義塾大学, 医学部, 准教授 (20217508)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | Oncoantigen / 免疫療法 / 神経膠腫 |
研究概要 |
Oncoantigenは、腫瘍悪性化に関与する抗原として提唱され、腫瘍発生初期に免疫学的に排除される抗原と異なり、免疫逃避される可能性が低いため、ワクチンへの応用が期待されている。一方、oncoantigenによるワクチン研究は、癌発生過程を再現可能なtransgenic mouseを用いてその有効性が検証されてきたが、これまで神経膠腫(グリオーマ)を安定して発生するマウスモデルはなく、また、脳腫瘍のoncoantigenは同定されていない。そこで、本研究では、我々の脳腫瘍幹細胞(BCSC)誘導・解析技術を基盤に、高頻度にグリオーマを自然発生するマウスモデルを確立する。さらに、我々の抗原解析技術を基盤に、悪性グリオーマにおけるoncoantigenを同定し、マウスモデルを用いてワクチンの有効性を検証し、悪性グリオーマに対する再発予防ワクチンの臨床応用を目指す。 本年度は脳腫瘍oncoantigenを同定するため、ヒトlow grade gliomaとsecondary glioblastoma組織の遺伝子・蛋白発現比較を行い、さらにインターネット上で公開されている分子情報および機能解析により、細胞の生存、増殖に関与する分子をoncoantigenの候補として解析を行った。その結果、4分子を候補抗原として選出した。これらの分子は正常組織での発現が低く、様々な癌腫においても髙発現していることが報告されており、ワクチンへ応用するための候補抗原として有用であることが示唆される。そこで、候補4分子のグリオーマ組織における発現を解析したところ、正常脳組織と比較して、多数のグリオーマ組織において髙発現を示すことが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
グリオーマ組織において高発現し、細胞の生存、増殖に関与するoncoantigenの候補抗原として、4分子の選出に成功している。
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今後の研究の推進方策 |
・新規のマウスグリオーマモデルの確立: マウスNSCからin vitroで誘導されるBCSCモデルの遺伝子変異(Ink4a/Arf欠失)・遺伝子導入(H-Ras/V12)に基づき、高頻度かつ短期間でグリオーマを発生するマウスモデルの確立を目指す。 ・選出された脳腫瘍oncoantigen候補抗原の機能解析: スクリーニングにより選出された脳腫瘍oncoantigen候補抗原の機能解析を行い、細胞の生存、増殖、細胞周期に関与する分子をoncoantigenとして同定する。 ・Oncoantigenワクチンの治療有効性の解析とCTLペプチドの同定: 同定されたoncoantigenのワクチンとしての治療効果をマウスBCSCモデルを用いて解析する。さらに臨床応用を目的として、oncoantigen由来のHLA結合性の細胞障害性T細胞(CTL)ペプチドの同定を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
効果的に物品調達を行った結果であり、次年度の研究費と合わせて試薬・消耗品などの購入に充てる予定である。 平成25年度に引き続き、oncoantigenの探索を行い、同定分子のRT-PCR、Western blot、免疫細胞染色、免疫組織染色により解析し、その発現特異性を検証をする。さらにOncoantigenとして選出された分子のBCSCおよびグリオーマ細胞における機能解析を行う。一方、マウスモデルを用いて、ワクチンを投与後、BCSCを移植後の脳組織を解析し、ワクチンによるグリオーマ発生予防効果を検討する。 上記計画の実施に必要な経費として、研究費を使用する。
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