研究課題/領域番号 |
25293317
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
辻 邦和 東京医科歯科大学, 医歯(薬)学総合研究科, 准教授 (20323694)
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研究分担者 |
宗田 大 東京医科歯科大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (50190864)
関矢 一郎 東京医科歯科大学, 再生医療研究センター, 教授 (10345291)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | BMP2 / BMP4 / BMP7 / synovitis / osteoarthritis / homeostasis / fracture |
研究概要 |
ザイモザンの投与や過度の力学的負荷により誘導される関節軟骨の退行変性の抑制に、リコンビナントBMP7タンパク(rhBMP7)の投与が効果的であることが知られている。そのメカニズムとして、rhBMP7が関節炎症や細胞外基質分解酵素の発現を抑制することが示唆されている。これに対して内在性Bmp7の関節のホメオスタシスにおける生理機能は、未だ解析されていない。これは、腎形成不全によりグローバルノックアウトマウスが生後早期に死亡することが最も大きな原因である。そこで、私たちは四肢特異的Bmp7のノックアウトマウス(BMP7c/c;Prx1::cre)の作成と表現型の解析を行い、Bmp7の欠損が、8週齢以降のマウス膝関節軟骨中のプロテオグリカン量の低下を誘導することを示した。本研究では、その分子メカニズムの詳細な解析を試みた。4、8, 24週齢のBMP7c/c;Prx1::cre およびコントロールマウス(without Prx1::cre)より採取した膝関節組織の矢状断切片を用いて詳細な組織学的、免疫組織学的、形能学的の解析を行った。その結果、8週齢以降のBMP7c/c;Prx1::cre の滑膜において著明な肥厚とF4/80陽性のマクロファージの浸潤が観察された。TUNEL染色をおこなった結果、8及び24週齢のBMP7c/c;Prx1::creマウスの関節軟骨および滑膜において著明なアポトーシスの増加は観察されなかった。軟骨基質の分解に関与するMMP13の発現は、24週齢において有意に上昇していた。 これらのことから、内在性のBMP7は、関節軟骨細胞の増殖、分化、生存に関与しないが、滑膜の炎症に対して抑制的に作用し、関節軟骨における細胞外基質分解酵素の発現を抑制することで、加齢に伴う軟骨の退行変性を予防することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究項目に関して、「BMP7欠損マウスに観察される自然発症の変形性膝関節症の病態の解析に基づく、関節軟骨のホメオスタシスにおけるBMPシグナルの生理機能の解析」に関しては、25年度に予定した計画に一定の進捗を得、内在性のBMP7が欠損した状態でおこる関節機能の変化に関して知見を得ることが出来た。本実験結果は、今年度中に学術論文として発表する予定である。四肢特異的BMP2コンディショナルノックアウトマウスに関しては、マウスコロニーの樹立に予定していたよりも多くの時間が必要であったため、進捗は遅れ気味である。しかしながら、BMP2欠損下で、新たに円盤状半月の形成が誘導されるとの知見を得ることが出来、新たな研究展開の方向性を開くことが出来た。骨髄特異的BMP4コンディショナルノックアウトマウスの解析からは、造血幹細胞の維持にBMP4のシグナルが必須であることを明らかとし、その分子目かに図布解析を行っている。一部進捗が遅れている点もあるが、以上の点より、全体的に見れば、おおむね順調に進展してきていると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
各研究項目に関して、「BMP2欠損マウスで観察される骨折治癒プロセスの破綻の原因解析に基づく、骨のホメオスタシスにおけるBMPシグナルの生理機能の解析」に関しては、研究計画書の通り、継続して実験を行っていく。加えて、前年度新たに発見した、円盤状半月の表現型の解析を行っていく。 研究項目「BMP7欠損マウスに観察される自然発症の変形性膝関節症の病態の解析に基づく、関節軟骨のホメオスタシスにおけるBMPシグナルの生理機能の解析」に関しては、一定の進捗を得たので、前年度得られた結果のまとめと、学術論文での発表を行う。くわえて、本年度は、滑膜炎症と関節軟骨基質分解酵素の発現に及ぼすBMP7の分子機能に関して、分子細胞生物学的なアプローチを行っていく予定である。 研究項目「BMP4欠損マウスにおいて観察される造血幹細胞数の低下の分子メカニズムの解析に基づく、骨髄造血微小環境(HSC niche)のホメオスタシスにおけるBMPシグナルの生理機能の解析」に関して、造血幹細胞の維持におけるBMP4の分子機能を骨髄間質系細胞との相互作用の観点からより詳細に解析を行っていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
予定していた研究項目に関して、四肢特異的BMP2コンディショナルノックアウトマウスの解析の為のマウスコロニーの樹立に、予定していたよりも多くの時間が必要であったため、マウス維持管理量並びに組織学的実験に用いる予定であった試薬の購入費用を次年度分として計上した。 次年度に繰り越した予算に関して、今年度は、今後益々増えてくるトランスジェニックマウスの維持管理費の補足分として本年度に使用を計画する。
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