研究課題/領域番号 |
25293319
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
秋山 治彦 岐阜大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (60402830)
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研究分担者 |
松田 秀一 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (40294938)
宿南 知佐 広島大学, 医歯薬保健学研究院, 教授 (60303905)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 廃用性骨萎縮 / カリウムチャネル |
研究実績の概要 |
我が国の高齢化社会の到来は、様々な疾患による骨脆弱性を起因とした易骨折性とその後の運動能力の低下を引き起こし社会的に大きな問題となっている。現在まで数種類の骨粗鬆症薬が開発され、骨粗鬆症患者の骨折リスクを軽減するエビデンスが得られているが、骨の永続的回復に効果が期待できる薬剤はない。骨皮質では外力負荷により骨形成が亢進する事は以前から知られている。しかし骨皮質の骨形成を司る骨細胞と骨髄腔に存在する骨芽細胞の細胞間の局所微小環境におけるメカニカルストレス-骨形成の分子メカニズムは未だ解明されておらず、皮質骨の骨量回復治療法が確立されていない理由の一つになっている。本研究では、遺伝子改変マウスを用いて、メカニカルストレスが、骨細胞に存在するカルシウム活性化カリウムチャネルが活性化することにより、皮質骨の維持や皮質骨の外力への順応をおこなっていることを明らかにすることを目的としている。本研究の成果により、骨粗鬆症および廃用性骨萎縮、骨折に対する組織再生医工学的治療および新規創薬の開発につなげることが期待される。 平成27年度は、初年度に遺伝子プロファイリングの解析から骨萎縮により発現が大きく変化するBKチャネルカルシウム活性化カリウムチャネルサブファミリーのKCNMB1及びKCNMB4遺伝子をそれぞれノックアウトしたマウスを交配して行き、KCNMB1;KCNMB4ダブルノックアウトマウス及びどちらかの遺伝子を欠失しているものの一方の遺伝子アレルが一つのみ残っているトリプルアレルミューテーションマウスを作成した。これらの遺伝子変異マウスはほとんどが生後も成長を続けている。現在、これらの遺伝子改変マウスの腰椎及び大腿骨、脛骨をマイクロCT及び硬組織切片を用いた骨形態計測による、骨形態及び骨密度など骨の性状を詳細に解析中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
廃用性骨萎縮を分子生物学的に解析するため、マウスの坐骨神経結紮モデルにおいて、術後1週目および3週目の骨萎縮を呈した大腿骨より骨細胞を単離し、カリウムチャネルKcnmb1とKcnmb4の発現レベルの変化をsham手術群と比較した。Kcnmb1は、廃用性骨萎縮1週目で発現量の増加を呈し、3週目で低下した。一方、Kcnmb4は廃用性骨萎縮1週目および3週目で継続的に発現量の低下を見た。以上の結果より、廃用性骨萎縮をきたした大腿骨骨細胞では、その初期にkcnmb1の発現が亢進し、Kcnmb4とは異なる何らかの役割を果たしていると考えられた。次に、マウス骨細胞にBKチャネルブロッカーであるTEA(tetra-ethyl-ammonium)およびオープナーのIPA(isopimaric acid)を添加しアルカリフォスファターゼおよびSOSTの発現を解析した。TEAでは、これら遺伝子の発現量は有意に上昇したものの、IPAではほとんど上昇しなかった。よって、Kcnmカリウムチャネルの機能亢進で骨細胞の機能が抑制されている事が推測された。以上の結果から、廃用性骨萎縮をきたした早期にはカリウムチャネルであるKcnmb1ユニットの一過性の遺伝子発現をきたし、骨細胞機能の早期抑制に関与している事が示唆された。 よって、生体におけるカリウムチャネルKCNM beta1及びKCNM beta4の骨組織での機能を明らかにするため、それぞれのノックアウトマウスを入手し、交配実験を実施した。KCNMB1;KCNMB4ダブルノックアウトマウス及びトリプルアレルミューテーションマウスを作成した。これらの遺伝子変異マウスはほとんどが生後も成長を続けている。現在、これらの遺伝子改変マウスの腰椎及び大腿骨、脛骨をマイクロCT及び硬組織切片を用いた骨形態計測による、骨形態及び骨密度など骨の性状を詳細に解析中である。
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今後の研究の推進方策 |
KCNMB1;KCNMB4ダブルノックアウトマウス及びどちらかの遺伝子を欠失しているものの一方の遺伝子アレルが一つのみ残っているトリプルアレルミューテーションマウス及びそれぞれのシングルノックアウトマウスの腰椎及び大腿骨、脛骨をマイクロCT及び硬組織切片を用いた骨形態計測による、骨形態及び骨密度など骨の性状を詳細に解析する。それぞれのマウスで廃用性骨萎縮変化が明らかに見とめられればこれらチャネルが骨細胞に作用し、骨萎縮に抑制的に作用する可能性がある。よって、次に骨萎縮の病態がBKチャネル修飾薬でどのように影響を受けるかをin vivoで明らかにする。2ヶ月齢のC57BL/6マウスの片側坐骨神経を切除した下肢不動マウスモデルを作製し、術後よりBKチャネルオープナー化合物であるCGS7184またはNS11021を、またBKチャネルブロッカー化合物であるIBTXをそれぞれの至適量連日投与する。 コントロールはSham手術群および手術+生理食塩水投与群とする。術後4週でマウスを屠殺し、大腿骨を摘出し、マイクロCTで骨皮質および骨量変化を解析する。さらに、硬組織切片による骨形態計測を実施し、廃用性骨萎縮に対するBKチャネル修飾薬の効果を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
遺伝子改変マウスの交配によりダブルノックアウトマウス及びトリプルアレルミューテーションマウスを作成しているが、これらのマウスの出生確率は極めて低く(ダブルノックアウトマウスは1/16の確率である)、遺伝子変異マウスの個体数が少なかったため、マウス維持管理費用として56,468円が次年度使用額として余った次第である。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度のマウス飼育管理費用として、56,468円を追加利用する予定である。
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