研究課題
基盤研究(B)
本年度に実施した研究成果については下記の通りである。1. 対象患者のリクルートとiPS細胞の作製:新たに 3名の罹患者より研究協力の承諾を受けた。必要な手続きを経て、対象患者から末梢血を採取し、そこから単核球を分離して、エレクトロポレーションによりエピゾーマルベクターを導入して、iPS細胞の樹立を開始した。2. FOP罹患者由来iPS細胞からのrescued iPS細胞の作製:1名のFOP患者由来iPS細胞の1クローンから、変異ACVR1/ALK2を遺伝子相同組み換えにより野生型に置換したrescued iPS細胞を、2ライン作製することに成功した。3. FOP-iPS細胞の分化能評価:申請時に確立していた骨誘導法および軟骨誘導法を用いて、作製したFOP罹患者由来iPS細胞の骨分化能および軟骨分化能を評価したところ、野生型に比べて有為に亢進していることが分かった。また、FOP-iPS細胞で観察された骨軟骨分化能の亢進は、rescued FOP-iPS細胞では抑制されていることが分かった。4. iPS細胞から未分化間葉系細胞への分化誘導法の確立:FOPの骨化の起源細胞の候補として、骨格筋細胞、血管内皮細胞、未分化間葉系細胞が挙げられる。本年度は野生型iPS細胞から未分化間葉系細胞への分化誘導法の確立を行った。確立した方法により、野生型iPS細胞から安定して高効率に未分化間葉系細胞を誘導することに成功した。
2: おおむね順調に進展している
新たなFOP患者のリクルートに成功した。FOP-iPS細胞と野生型iPS細胞から骨軟骨を分化誘導し、分化能を比較することにより、FOP-iPS細胞は骨軟骨分化能が亢進しているという結果を得た。変異を野生型に戻したレスキュークローンの作製に成功した。さらに野生型iPS細胞から未分化間葉系細胞へと分化誘導する方法を確立した。当初計画していた血管内皮細胞への分化誘導および骨格筋への分化誘導については計画より遅れているが、全体としてはおおむね順調に進展していると考えている。
当初の予定通り、同一患者の他のiPS細胞クローンと、別患者のiPS細胞クローンからレスキュークローンの作製へと進む。また、平成25年度にやり残した血管内皮細胞と骨格筋細胞への分化誘導法の確立を進める。昨年度に確立した未分化間葉系細胞への分化誘導法をFOPクローンとレスキュークローンに適用し骨軟骨分化能を検討する。これらの分化能に差異が観察された場合は、マイクロアレイやプロテオーム解析による網羅的解析を実施し、病態解明の糸口とする。
平成25年度の当初計画では、iPS細胞から血管内皮細胞、骨格筋、未分化間葉系幹細胞への分化誘導法の確立を目指していたが、このうち最も進行が早かった未分化間葉系幹細胞への分化誘導に集中的に力を注いだため、血管内皮細胞および骨格筋への分化誘導法の確率が計画より遅れた。そのため、その実験に充当する予定であった資金を翌年に繰り越しすることになった。平成25年度に引き続き、iPS細胞から血管内皮細胞および骨格筋への分化誘導法の確立を目指す。さらに平成25年度の成果として、iPS細胞から未分化間葉系幹細胞への分化誘導法が確立できたため、平成26年度は、この方法をFOP患者由来のiPS細胞と、遺伝子改変技術により変異をレスキューしたresFOP-iPS細胞に適用する。この実験で骨形成あるいは軟骨形成の更新が見られた場合、より詳細な解析へと進む。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 1件) 備考 (1件)
実験医学別冊 ES・iPS細胞実験スタンダード
巻: 39 ページ: 246-257
Orphanet J Rare Dis.
巻: 8 ページ: -
10.1186/1750-1172-8-190.
https://www.cira.kyoto-u.ac.jp/j/pressrelease/news/131225-105830.html