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2014 年度 実績報告書

iPS細胞を用いた進行性骨化性線維異形成症の病態解明

研究課題

研究課題/領域番号 25293320
研究機関京都大学

研究代表者

池谷 真  京都大学, iPS細胞研究所, 准教授 (20442923)

研究分担者 戸口田 淳也  京都大学, 再生医科学研究所, 教授 (40273502)
研究期間 (年度) 2013-04-01 – 2016-03-31
キーワード進行性骨化性線維異形成症
研究実績の概要

本年度に実施した研究成果については下記の通りである。
1. FOP罹患者由来iPS細胞からのrescued iPS細胞の作製:平成25年度に作製したFOP患者とは別の患者由来iPS細胞の1クローンから、変異ACVR1/ALK2を遺伝子相同組み換えにより野生型に置換したrescued iPS細胞を、2ライン作製することに成功した。
2. FOP罹患者由来iPS細胞およびrescued-iPS細胞からの、未分化間葉系細胞の作製: FOP罹患者由来iPS細胞、および遺伝子修復をした対照iPS細胞から、未分化間葉系細胞を分化誘導することに成功した。
3. FOP罹患者由来iPS細胞およびrescued-iPS細胞からの、血管内皮細胞の作製: FOP罹患者由来iPS細胞、および遺伝子修復をした対照iPS細胞から、血管内皮細胞への分化誘導を試みた。しかし、従来法では誘導効率が1%程度と非常に低く、また誘導された細胞は市販の血管内皮用培地で増殖しなかった。
4. FOP-iPS細胞の分化能評価:FOP罹患者由来iPS細胞、および遺伝子修復をした対照iPS細胞の骨分化能および軟骨分化能を比較したところ、FOP-iPS細胞の方がrescued FOP-iPS細胞に比べて軟骨化能が有為に亢進していることが分かった。
5. 薬剤誘導型ACVR1発現細胞株の作製:ヒト骨肉腫細胞株(U2OS)に薬剤誘導型の野生型ACVR1とFOP型ACVR1を発現するコンストラクトを遺伝子導入し、誘導型ACVR1発現株を作製した。作製したU2OS細胞株にACVR1を発現誘導し、さらにBMP7を添加する実験を行ったところ、これまでに示されていたように、FOP型ACVR1を発現させた株でBMPリガンド非依存的な恒常活性化とBMPリガンド依存的な過剰活性化が確認できた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

申請時の計画のうち、対象患者のリクルート、iPS細胞作製、多能性の検討は平成25年度に終了していた。平成25年度より継続して行っていたrescued iPS細胞の作製は、平成25年度に作製した患者とは別の患者のiPS細胞の1クローンから、2ライン作製することに成功した。これらのFOP-iPS細胞とrescued iPS細胞から、骨軟骨細胞の前駆細胞である未分化間葉系細胞へ分化誘導することに成功した。さらに、未分化間葉系幹細胞から骨細胞および軟骨細胞を誘導することに成功し、FOP細胞とrescued細胞で比較したところ、FOP細胞の方がrescued細胞より軟骨誘導能が亢進していることを示すことにも成功した。
一方で、当初予定していた血管内皮細胞への誘導は、研究所内の専門家との共同研究を行ったにもかかわらず、十分な効率で細胞を得ることができず、また得られた細胞は増殖しなかったため、研究の継続を断念した。また、誘導型ACVR1発現細胞株として、申請時には野生型iPS細胞への導入を計画していたが、シグナルをより顕著に検出できるヒト骨肉腫細胞株(U2OS)にコンストラクトを導入し、これまでに他のグループから発表された結果と同様の結果を得ることができた。
以上から、血管内皮細胞への分化誘導は実験上の問題から断念したものの、その他については当初の予定通り、あるいは方針を変更して進行しており、全体としてはおおむね順調に進展していると考えている。

今後の研究の推進方策

平成27年度は、当初の予定通り、1. FOP 罹患者由来iPS 細胞を用いた病態解明と、2. in vivo モデルマウスでの検証を行う。
1. FOP 罹患者由来iPS 細胞を用いた病態解明
平成26年度に作製に成功したFOP細胞とrescued細胞から誘導した未分化間葉系幹細胞と、そこから分化した軟骨細胞を用いて、網羅的遺伝子解析による軟骨化を誘導する遺伝子群の同定、さらには解析により得られた遺伝子群のノックダウンを行う。また、パスウェイ解析によるシグナル伝達経路の解明、およびシグナル阻害薬添加などを行い、軟骨化にどのように影響するかを検討する。
2. in vivo モデルマウスでの検証
上記解析により得られた遺伝子群とシグナル伝達経路について、in vivo で検討する。モデルマウスを用い、そこにノックダウン用siRNA の投与、あるいはシグナル伝達阻害剤の投与を行う。FOPモデルマウスとしては、ACVR1/ALK2遺伝子座にR206Hを導入したノックインマウスのキメラマウスが、ペンシルバニア大学のEileen Shore 博士らにより作製されているため、この提供を依頼する。提供を受けることが不可能な場合は、BMPタンパクの投与や、あるいはFOP罹患者由来iPS細胞より作製した未分化間葉系細胞の移植などにより、モデルを作製することも検討する。

次年度使用額が生じた理由

平成26年度の当初計画では、平成25年度に引き続き、必要に応じて新たなFOP罹患者のリクルートを行い、新たに作製したiPS細胞の多能性の検討を行う予定であった。しかし、平成25年度に複数のFOP患者からiPS細胞の樹立を終えることができたため、平成26年度は樹立を行わなかった。そのため、その実験に充当する予定であった資金を翌年に繰り越すこととなった。

次年度使用額の使用計画

平成27年度は、もっとも研究が進んだ未分化間葉系細胞をFOP細胞とrescued細胞から誘導し、さらにそこから分化した軟骨細胞を用いて、網羅的遺伝子解析を行う予定である。さらには、FOP変異による軟骨化の亢進を引き起こす遺伝子群の同定、それら遺伝子群のノックダウン実験を予定している。当初想定していたのはサンプル数がFOP細胞と対象細胞の2種類、タイムポイントが6点であったが、これまでの解析によりさらに多くのタイムポイントを取る必要が生じている。また、RNAi実験についてもより多くの遺伝子について検討する可能性があり、繰り越した資金は、網羅的遺伝子解析のためのRNAseq関連試薬、ノックダウン用のRNAiなどの高額試薬に充当する予定である。

備考

進行性骨化性線維異形成症罹患者由来iPS細胞を用いて、病態再現と創薬に向けたアッセイ系の構築に成功 池谷真、戸口田淳也 京都大学/JST 2015/3

  • 研究成果

    (15件)

すべて 2015 2014 その他

すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 2件、 謝辞記載あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (6件) (うち招待講演 1件) 備考 (2件) 産業財産権 (1件) (うち外国 1件)

  • [雑誌論文] New Protocol to Optimize iPS Cells for Genome Analysis of Fibrodysplasia Ossificans Progressiva.2015

    • 著者名/発表者名
      Matsumoto Y, Ikeya M, Hino K, Horigome K, Fukuta M, Watanabe M, Nagata S, Yamamoto T, Otsuka T, Toguchida J.
    • 雑誌名

      Stem Cells.

      巻: 印刷中 ページ: 印刷中

    • DOI

      10.1002/stem.1981

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] 患者由来iPS細胞を用いた疾患モデル作製研究:骨軟骨疾患2015

    • 著者名/発表者名
      戸口田淳也、池谷 真
    • 雑誌名

      医学の歩み

      巻: 252 ページ: 1245-1250

  • [雑誌論文] 進行性骨化性線維異形成症2015

    • 著者名/発表者名
      池谷 真、松本佳久、戸口田淳也
    • 雑誌名

      遺伝子医学MOOK

      巻: 27 ページ: 203-207

  • [雑誌論文] 疾患特異的iPS細胞を用いた難治性骨軟骨疾患の病態解析・創薬2015

    • 著者名/発表者名
      戸口田淳也、池谷 真、西小森隆太、松本佳久、横山宏司
    • 雑誌名

      実験医学増刊 再生医療2015 幹細胞と疾患iPS細胞の研究最前線

      巻: 33 ページ: 147-151

  • [雑誌論文] Derivation of Mesenchymal Stromal Cells from Pluripotent Stem Cells through a Neural Crest Lineage using Small Molecule Compounds with Defined Media.2014

    • 著者名/発表者名
      Fukuta M, Nakai Y, Kirino K, Nakagawa M, Sekiguchi K, Nagata S, Matsumoto Y, Yamamoto T, Umeda K, Heike T, Okumura N, Koizumi N, Sato T, Nakahata T, Saito M, Otsuka T, Kinoshita S, Ueno M, Ikeya M, Toguchida J.
    • 雑誌名

      PLOS ONE.

      巻: 9 ページ: e112291

    • DOI

      10.1371/journal.pone.0112291

    • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Special Review 間葉系幹細胞を巡る最近の進歩について2014

    • 著者名/発表者名
      戸口田淳也、福田誠、池谷真
    • 雑誌名

      細胞工学

      巻: 33 ページ: 1282-1287

  • [学会発表] 疾患特異的iPS細胞を用いた進行性骨化性線維異形成症の創薬に向けた薬剤 スクリーニング系の構築2015

    • 著者名/発表者名
      松本佳久、 池谷真、 福田誠、永田早苗、 浅香勲、 大塚隆信、 戸口田淳也
    • 学会等名
      第14回日本再生医療学会総会
    • 発表場所
      パシフィコ横浜(神奈川県横浜市)
    • 年月日
      2015-03-20 – 2015-03-20
  • [学会発表] Derivation of mesenchymal stromal cells from pluripotent stem cells through a neural crest lineage using small molecule compounds with defined media2015

    • 著者名/発表者名
      Makoto Fukuta, Yoshinori Nakai, Kosuke Kirino, Morio Ueno, Makoto Ikeya, Takanobu Otsuka, Junya Toguchida
    • 学会等名
      第18回武田科学振興財団生命科学シンポジウム
    • 発表場所
      武田薬品研修所(大阪府吹田市)
    • 年月日
      2015-01-15 – 2015-01-15
  • [学会発表] 疾患特異的iPS細胞を用いた進行性骨化性線維異形成症の病態解析2014

    • 著者名/発表者名
      松本佳久、池谷真、福田誠、永田早苗、浅香勲、大塚隆信、戸口田淳也
    • 学会等名
      第29回日本整形外科学会基礎学術集会
    • 発表場所
      城山観光ホテル(鹿児島県鹿児島市)
    • 年月日
      2014-10-09 – 2014-10-09
  • [学会発表] Application of iPS cells for rare and intractable bone and cartilage diseases2014

    • 著者名/発表者名
      池谷真
    • 学会等名
      第29回日本整形外科学会基礎学術集会
    • 発表場所
      城山観光ホテル(鹿児島県鹿児島市)
    • 年月日
      2014-10-09 – 2014-10-09
    • 招待講演
  • [学会発表] Identification of gene sets dysregulated by mutant ACVR1 gene causing a rare intractable disease, fibrodysplasia ossificance progressive2014

    • 著者名/発表者名
      Yoshihisa Matsumoto, Makoto Ikeya, Makoto Fukuta, Edward Hsiao, Yohei Hayashi, Isao Asaka, Takanobu Otsuka, Bruce R. Conklin, Junya Toguchida
    • 学会等名
      米国骨代謝学会
    • 発表場所
      Houston(USA)
    • 年月日
      2014-09-14 – 2014-09-14
  • [学会発表] Identification of gene sets dysregulated by mutant ACVR1 gene causing a rare intractable disease, fibrodysplasia ossificance progressive2014

    • 著者名/発表者名
      Yoshihisa Matsumoto, Makoto Ikeya, Makoto Fukuta, Edward Hsiao, Yohei Hayashi, Isao Asaka, Takanobu Otsuka, Bruce R. Conklin, Junya Toguchida
    • 学会等名
      第12回国際幹細胞生物学会
    • 発表場所
      Vancouver(Canada)
    • 年月日
      2014-06-18 – 2014-06-18
  • [備考] FOP患者さん由来iPS細胞を用いて、 病態再現と創薬に向けた評価系の構築に成功

    • URL

      http://www.cira.kyoto-u.ac.jp/j/pressrelease/news/150313-163653.html

  • [備考] ヒトiPS/ES細胞より高効率に神経堤細胞および間葉系間質細胞の作製に成功 PLOS ONEに掲載

    • URL

      http://www.cira.kyoto-u.ac.jp/j/pressrelease/news/141203-075150.html

  • [産業財産権] 異所性骨化の予防・治療剤及びそのスクリーニング方法2014

    • 発明者名
      戸口田淳也/池谷真/松本佳久
    • 権利者名
      戸口田淳也/池谷真/松本佳久
    • 産業財産権種類
      特許
    • 産業財産権番号
      2014-26108
    • 出願年月日
      2014-12-24
    • 外国

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公開日: 2016-06-01  

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